著者のジェイク・ナップはグーグルで、ジョン・ゼラツキーはユーチューブで、人の目を「1分、1秒」でも多く引きつける仕組みを研究し続けてきた「依存のプロ」だ。
そんな人間心理のメカニズムを知り尽くした2人だからこそ、同書の時間術はユニークかつ、きわめて本質を突いている。「人間の『意志力』などほとんど役に立たない」という、徹底して冷めた現実的な視点からすべてが組み立てられているのだ。
さらに、「いくら生産性を上げても、ひたすら他人の期待に応えているだけ」で、自分のためになっているわけではないという。では、このテクノロジー全盛のスピードの速すぎる世界で、人生を本当に豊かにするには、いったい時間をどう扱うべきか?
同書からハイライトを抜粋して紹介する。
「ラク」に逃げているから、大事なことができない
僕ら2人は断るのが苦手な、デフォルトで「イエス」と言ってしまうタイプの人間だ。それは優しさでもあり、はっきり言えば意気地のなさでもある。断るより「イエス」と言うほうがずっと簡単なのだ。
招待や新しいプロジェクトを断るのは気まずい。僕らは最初に断る勇気がなかったばかりに、本当に大事なことに使えたはずの膨大な時間を無駄にしてきた。だがこの問題に向き合ううちに、「ノー」をデフォルトにしたほうが気楽だということに気がついた。デフォルトを切り替えるのに役立ったのは、いつでも断れるように「シチュエーション別の断り方」を用意したことだ。
パターン別の「断り方」を決めておけ
自分にとってもっと大事なことをやる予定で、時間がとれない? そんなときは、
「悪いけど、大きなプロジェクトで忙しくて、新しいことに取り組む時間がないんだ」
無理すれば新しいプロジェクトを予定に入れられるかもしれないが、中途半端になってしまいそう? そんなときは、
「悪いけど、時間がなくてあまり貢献できそうにない」
確実に楽しめないであろうイベントに誘われた? そんなときは、
「誘ってくれてありがとう、でもソフトボールにはうとくて」
ひとことで言えば、「感じよく、正直に断る」ということ。
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人の頼みをはぐらかしたり、いいわけをでっちあげたり、いつまでも先延ばしにしたりするワザがいろいろあるのは知っている。僕らもいくつか試したことはあるが、後味が悪いし、不誠実だ。
さらに悪いのは、難しい決定を先延ばしにしているだけ、という点だ。どっちつかずの態度を取り続けることは、船体にくっついたフジツボのように心の重荷になる。だからそんなワザはきれいさっぱり忘れて、フジツボをはがして本当のことを言おう。
何かを頼まれて今回は断っても、いつか引き受けられる日が来るかもしれない。しつこいようだが、正直になろう。「誘ってくれてありがとう、ぜひまた今度」「頼んでくれてうれしかった、そのうち一緒にやりたいな」など。