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2020.07.17 07:00

急増するペット需要 犬の「本当の気持ち」がわかるデバイスが映し出す未来


犬と心を通わせるために


イヌパシーの開発は、ラングレスCTOの山口譲二を中心に進められた。山口はもともと大学で動物行動学を学んでおり、動物やその行動に関する幅広い知識を持っていた。そんな専門家の山口だったが、パートナーが飼っていたコーギーとなかなか仲良くなれず、歯痒い思いをしたという。

ある日、コーギーがドッグフードを食べなくなってしまい、山口は少しでも食べてもらおうと試行錯誤したがうまくいかなかった。困った山口は犬を安心させてあげたいと思い、自らドッグフードを食べる真似をした。するとどうだろう、それまでまったくドッグフードを食べなかった犬が自分から食べてくれるようになった。

「知識だけではイヌと距離を縮めることができず、その子が何を感じているのかちゃんと理解することが大切」。そう感じた山口は、犬の気持ちをもっと深く知りたいという気持ちからイヌパシーの開発に着手した。

心拍から心の動きを可視化する



写真提供:ラングレス

山口が犬の気持ちを理解するために着目したのは「心拍」だった。人間は心拍の変動からストレスの度合いをチェックできるため、犬でも同じ原理を応用できるのではないかと考えた。そこで、犬の心拍と感情の関係性を明らかにしようと研究開発に取り掛かったが、「犬の心拍をどうやって取得するのか」という問題が立ちはだかった。

人間であれば、胸に電極センサーを付けて心臓の電気信号から心拍を測定したり、Apple Watchなどのウェアラブルデバイスのように、LEDライトと光検出器を用いて血管のサイズの変化から光学的に心拍を検出したりすることが可能だ。
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文=入澤諒

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