ビジネス

2020.07.18

オンラインでもグローバルでも 縁とアイデアが加速する働き方

Getty Images


谷本:尾原さんは以前、「グローバルカンファレンスなどで、自分が身につけているバックパックやスニーカーがきっかけになって、海外の友達ができる」っておっしゃっていましたよね。決して難しい知見を交換しあうのではなく、とってもチャーミングなやり方だなと思いました。

尾原:僕のバックパックはソーラーパネルがついていて、そこら中で「見せてよ」って話しかけられます。海外で友だちを作る最強の武器ですね。



谷本:身の回りの小物でコミュニケーションを取り始めるというのが印象的でした。「ああ、何も気負うことないんだ」って。私にとってはそれが、「べき」じゃなくていいことに気づくきっかけになりました。

尾原:そうですね。小物って、相手に話しかけてもらうときのフックになりやすいですから。例えば僕のバックパックについては、だいたい2パターンの質問をいただくんです。

一つは、「君はサステナビリティが好きな人間なのか」、もう一つは「デジタルガジェットが好きな人間なのか」。そして会話が始まるわけです。僕にとって前者は長期テーマだし、後者はオタクだからいくらでも話せる。

「じゃあ君はサステナブルをどう思っているんだ」みたいな話をすると、相手も嬉々として話してくれる。人と人が“好き”をきっかけにつながるとき、お互いの所属先は関係ないです。僕はほかにも、ピカピカ光る電子スニーカーを履いていたら、「それどこで買ったの?」と声をかけられて、振り返ったらジョン・ドーア(伝説的なベンチャー投資家)だったり、“好き”がご縁のきっかけになったことが何度もあるんです。

大事なのは、“好き”を視覚化すること。仲間を見つけるサインを持ち歩いていれば向こうから声をかけてくれる。だから、自分が喋ってみたい相手、ご縁を紡ぎたい相手との間に、どれだけサインをおけるかって話でもあるんです。



これって実は、グローバルでお互いの価値観の違いを越えて交流し合うための「プロトコール(国際儀礼)」でもあるんです。元々、プロトコールの原義は海を航海する時の手旗信号なんですね。安全に近づいて交易するために、相手とぶつかりたくない時は合図して避け合う。

言い換えれば、本来的な礼儀作法とは、同じ趣味を持つ者同士、同じ文化社会の中で生きている者同士なら「じゃあちょっと話をしてみようよ」と合図しあい、自分と合わない相手とは、「お互いに違う種族なんだね、なら無理に近づかなくてもいいよね」と理解しあうことでもあるのだと思います。

ただ僕は、そこまできちっとした礼儀作法ではなく、分かりやすいソーラーパネルつきザックで仲間を見つけている。だから、特に海外ではサインになるものを1個持っておくと、「日本人として!」みたいに気負わずに済むはずです。自分が好きなもので、よほどTPOを外さなければ何でもいいと思います。

谷本:最後にこれを読んでくださっている方に、一言メッセージを頂戴できますか。

尾原:コロナ以降、つらい時期が続いています。まず大前提として、ケアが必要な方はまず自分を大事にされてほしいです。そして、おそらくこの記事を読んでいるのは、少し余裕が出てきた方ではないでしょうか。であれば、今は新しい自分を作るチャンスでもありますから、あなたが大切に思う人にギブをいっぱいして、失敗もたくさんしていく中で、自分らしさに出会えていければいいなと思います。この本がそのお手伝いになればこれほど嬉しいことはありません。

文=小野田弥恵 編集=Forbes JAPAN編集部 写真=Getty Images

ForbesBrandVoice

人気記事