そうした問いに対して、「何者かになりたいなら、まず誰かにとっての何者かになろう」と言うのが、フューチャリストの尾原和啓氏だ。現代社会では、売上、顧客数、フォロワー数などあらゆる数字に追われ、「誰かにとってのなにか」という視点を忘れがちだが、尾原氏はそれこそが起点になると、新著『あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略』で提唱する。
では、誰かにとってのなにか、つまり、必要とされる人になるにはどうすれば良いのだろう? 7月初旬、新著の発刊を記念して尾原氏とForbes JAPAN Web編集長・谷本有香がインスタグラムライブを開催。「アフターコロナの生存戦略」と題し、コロナにより激変する社会で必要とされるビジネスパーソンになるコツを聞いた。(後編は7月18日公開)
谷本有香(以下、谷本):Forbes JAPAN webに長年寄稿いただいた人気コラムが本になりました。すでに読ませていただいたのですが、とても面白かったです。
尾原和啓(以下、尾原):谷本さんにお声がけいただいて以来、おかげさまで3年半にわたる連載となりました。書籍はもともと5月に出版予定でしたが、コロナの状況を鑑みて、今後の変化をより楽しむためにはどうすればいいのかを改めて熟考し、3分の1ほど加筆しての発売となりました。
谷本:本でも触れられていますが、尾原さんは、コロナ以降の変化をどうお考えですか。
尾原:大きな変化としては、今の10代、20代を中心に据えたインターネット文化が、社会のルールに組み込まれていくと思います。
これまで、国や社会のルールを作ってきたのは40代以上でした。議員の平均年齢は50代、大臣の平均年齢は60代、会社でそれにあたる部長クラス以上はだいたい40代後半。つまり、社会のルールを作ってきたリアル世代と若いインターネット世代の間にやや断絶があり、リアル世代が、インターネット世代の文化についてこられていない部分がありました。
ところが、コロナの影響で一気にオンライン化が進み、リアル世代がインターネット文化に触れ、「あれ、会議のために電車に乗らなくて済むじゃん」「電子判子でも十分だな」というように、案外オンラインのほうが快適であることを実感するようになりました。
もちろん向き不向きはあると思いますが、社会のオンライン化が進んだ以上、インターネットでつながり合う人たちは増えていくし、そこでかけ合わさってアイデアが生まれ、どんどん世の中を変えていく流れが加速していきます。すると、僕はリアル世代がどれだけ変化を楽しめるかがポイントになると思っています。
その中で、変化を楽しめず、「やっぱりリアルがいいよね」と懐かしさのなかに戻るのだとしたら、変化の速い人たちからは置いていかれるかもしれない。選択は自由ですから、どちらが正しいわけでもないですが。僕はやはり変化を楽しんでいきたいと思いますね。