そのマスクは、実際にはどのようなタイプに、どの程度の効果があるのだろうか。先ごろ流体力学のジャーナル「Physics of Fluids」に新たに掲載された論文は、実験結果を可視化することで、感染の抑制におけるマスクの重要性と、最も有効性が高いとみられるマスクを明らかにしている。
論文の著者であるフロリダ・アトランティック大学のシダータ・ヴァーマ助教(海洋機械工学)は、現時点で最も入手しやすい布製のマスクに関する情報が少ないことを指摘。「実験結果を示すことで、マスクが推奨される根拠が明確になり、着用への理解が深まればと考えた」と説明している。
研究チームは医療用マネキンとグリセリンを混ぜた水を使って咳やくしゃみを再現。煙霧機とレーザーを使い、飛沫粒子が肌とマスクの隙間や、生地そのものから噴出する様子を視覚化した。
実験の対象としたのはバンダナと、ジェローム・アダムス医務総監(米国の公衆衛生政策を指揮)が作り方を紹介している「ハンカチを折り畳んで作った」マスク、コットンのキルト生地を2層に重ねて縫った手作りマスク、ドラッグストアで販売されているコーンマスクだ。
実験の結果、微粒子の飛散を抑制する効果が最も高かったのは、手作りマスクだった。素材自体からの漏れがほとんどなく、「飛沫が前方に向かって飛散する動きをほぼ完全に抑えていた」という。ただ、マスクと鼻の隙間から上方への噴出はあり、平均6.4cm先まで飛んでいた。
2番目に効果が高かったのは、コーンマスクだ。結果は手作りマスクとほぼ同様だったが、上方への飛散は約15.3cm先まで確認された。
ハンカチを畳んでマスクにしたものは、平均で約38cm前方まで飛沫が飛んでいた。研究チームによれば、「(口元をまったく覆っていない場合と比べれば)大幅に飛散距離を抑えられるが、生地を通してかなりの量が前方に噴出していた」という。上部への噴出もみられた。