世界一の車、ロールス・ロイス・ファントムは異次元の高級感

Rolls-Royce Phantom


「世界で最も静粛なクルマ」を目指した


ファントムの運転席の写真

BMW傘下に入っているロールス・ロイスにとって、ファントムが2017年にフルモデルチェンジされるのは、14年ぶりだった。ファントムが使うロールス専用プラットフォームの「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」は、2018年にデビューした同社初のSUV「カリナン」にも使われている。

オールアルミのスペースフレームという軽量構造だと聞くと、当然、開発チームは軽量化や効率化を狙ったと思いきや、そうではなく、“世界で最も静粛なクルマ”にする事がゴールだったという。それはそうだ。ロールス・ロイスに乗るなら、気にしてはならないことは、車重と燃費とコスト。

4万4000色の中から選べるボディカラーは、車体全体が2層で厚み6mmのつや出しペイントで覆われ、どの高級車のガラスをも凌ぐ極厚の2重ガラスが使われる窓からは、外の音は室内に入れない。音や振動を吸収するために、タイヤの中にはウレタンフォームが潜んでいるほどだ。また、厚さ6cmほど世界一分厚いフロアカーペットも、音を吸収しているに違いない(笑)。

ファントムのキャビンで聞こえる一番大きな音はおそらく、後部席の2人が乾杯して「チン」と鳴らすロールス専用シャンペーン・フルートの音だろう。でも、「このクルマの静粛性は世界一」だとか「高級感は世界一」などと言ったら、失礼に当たる感じがする。なんか「ウサイン・ボルトは速い」と言っていると同じような雰囲気。当たり前すぎる。室内は異次元の静かだけど、それ以上に驚くのは、高級感を作り出すロールスの職人の技術のレベルと、その精巧さだ。

話題の観音開きドアは魔法の部屋へのお誘い


先にグリルに触れたけど、それより目立つのは観音開きのドアだ。開けると、まるでフォー・シーズンズ・ホテル級のスイートの高級な家具とアクセサリーに歓迎される感じ。観音開きドアだからこそ、後部席に乗り降りしやすいだけでなく、別の次元への特別な扉を抜けるような気分。後部席シートには当然、マッサージ機も入っているし、肘かけのフタを開けると、インフォテインメントのダイアルも入っている。ピクニック・テーブルと薄型テレビを出してくれるスイッチもいじることもできる。

ファントムのドアを開いた様子

シートに座っていると、ドアのハンドルまで手が届かなくても、頭の横にあるボタンを押せば、重いドアは自動的に閉まる。また、雨が良く降る英国の自動車会社だから想像できた専用部品がある。それは、ドアを開けて降りると、ドアの中に収められた専用傘だ。エレガントな傘をスムーズに出し入れことができる。

ファントムのエンジンも美術品そのものだ。なんと571psと900Nmのトルクを発揮する6.75リッターV12ツインターボは、見事な加速性を持つ。0-100km/hでは、スポーツカー並みの5秒強。いうまでもなく、低中速トルクは非常に太くて、市街地を走るにしても、高速道路で合流する時でも、アクセルを少し踏めば、走っていたい場所にすぐにたどり着く。ファントムの走りは、エアスプリングと連続可変ダンパーが基本であり、カメラによる先読みパラメーターも合わせて制御するセミアクティブサスペンションが、とろけるほどの乗り心地を提供する。

魔法のカーペットの乗り心地


ステアリングも低速では軽いのに対して、速度が上がると重みと手応えが出てくるし、路面からのフィードバックも十分と言える。不思議なことに、ファントムは巨大なクルマで少し慣れが必要だけど、車体の四隅が分かりやすい。ボンネット中央の「スピリットちゃん」(スピリット・オブ・エクスタシーのことだ)のおかげもあって、運転席の反対側の路肩の位置が良くわかるし、四輪操舵(4WS)で取り回し性も予想以上に良好だ。日本の狭い路地では、その4WSが非常にありがたい。

ロールスの乗り心地を「魔法の絨毯」という表現するけど、まさにその通りだ。やはり、エアサスがついているからこそ、フアフアと走るそのフィーリングはまるで雲の上を走行しているフィーリングだ。ただ、ウネリや凸凹の激しい道路を走る場合、後部席では、多少ピッチング現象が起きるので、そういう時には足回りが一瞬に硬くなるスポーツモードに切り替えた方がいいだろう。

「世界一のクルマ」と言われるファントムはいろんな意味で異次元のクルマだ。あなたが乗りたければ、一つ頭に入れて欲しい。当然、多くのファントムのユーザーは運転手を採用するだろうけど、同車は意外と楽しいので、自分で運転したくなる可能性が強い。だから、自分で運転するなら、運転手に払うべきギャラはさらなるオプションに費やすことはできるかもしれない。例えば、後部席のシャンパンを冷やす冷蔵庫と専用シャンパン・フルートは不可欠だろう。

ファントムを後ろから見た写真

文=ピーター・ライオン

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