「自由」失う香港のいま 国家安全法が及ぼす影響はどう広がっているか

国家安全法が7月1日に施行され、1日の逮捕者のうち10人に適用された(Getty Images)

多くの反発を受けた香港の国家安全法が6月30日に施行され、「一国二制度」は事実上崩壊した。この法案により、中国政府に反発する言動は犯罪とみなされ、処罰の対象となる。若者を中心に広がっていた民主化デモも、今後はできなくなるだろう。書籍の検閲などもすでに始まっており、ネット上の情報監視を警戒したSNS各社は対抗措置を打ち出し始めた。

今回の制定は香港の法制度を根本的に変えてしまうという懸念もあるが、現地ではどのような変化が起こっているのか。デモに参加した学生たちへのインタビューを含めた後編とあわせて、「香港のいま」を紹介する。

最高刑は無期懲役


全国人民代表大会の常設委員会で全会一致で可決された「香港国家安全維持法(以下、国家安全法)」は、30日23時頃に施行された。数時間後に明らかになったその内容は、違反者には最高で無期懲役が科されるなど厳しいものとなった。7月1日だけでも、香港警察は約370人を逮捕し、そのうち10人に国家安全法を適用したという。

法制定により、中央政府からの離脱、国家転覆、テロリズム、外国勢力と協力して政府に介入することなどが犯罪とみなされ処罰される。実際にこれらの行為をしていなくても、同様の目的で計画を立てることや行為を煽動するような発言、金銭的に協力することも犯罪となる。

条文に曖昧な表現が多いことも懸念の1つだ。外国勢力と協力して中央政府や香港政府に対しての「hatred(憎しみ)」を駆り立てることも処罰対象となっており、言論を幅広く規制できるような文言となった。また、上記のような言動が「重大な状況」だと政府が判断した場合や、「希少なケース」の場合は、刑期が数年伸びるなど罰が重くなる。

国家安全法にはこのほか、香港における中国の中央政府の権力を拡大する内容が盛り込まれた。香港に治安維持機関を新たに設置し、中央政府の中でも強硬派の高官をメンバーに指名。外国勢力の介入により香港政府では対応しきれないケースや、国家の安全に深刻な影響を及ぼしかねないケースについては、機関に調査する権利が与えられる。

香港警察と市民
香港のショッピングモールで集まった人たちと警察官ら (Getty Images)
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文=田中舞子 編集=督あかり

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