ドクター・オンデマンドは2012年、「ドクター・フィル」こと医師でタレントのフィル・マグローらが共同で創業した。医師に至急診てもらいたい患者向けのウェブサイトとアプリから、プライマリーケア(初期診療)やメンタルヘルスケアのオンラインプラットフォームへ成長を遂げており、医師700人あまりを擁し、累計の患者訪問数は300万件を超える。
同社の8日の発表によると、新たな資金は米プライベート・エクイティ(PE)ファンド、ジェネラル・アトランティックのリードによるシリーズDラウンドで調達した。これにより、これまでの資金調達額は2億4000万ドル近くに達した。
最高経営責任者(CEO)のヒル・ファーガソンは「3月以来、右肩上がりの上昇が続いてきた」と明かし、会社の成長は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)だけでなく、そのパンデミックが及ぼしたさまざまな影響によるものだとの見方を示す。
遠隔診療は何年も前からあったが、今回のパンデミックが起こるまでなかなか広がらなかった。保険の払い戻し手続きが煩雑だったり、医師側にあまりやる気がなければ、患者のほうも対面での診察を好みがちだったりしたからだ。だが、コロナ禍によって「それらは全部変わった。市場の進展が劇的に加速した」(ジェネラル・アトランティックのマネジングパートナー、ロバート・ヴォーホフ)
ファーガソンはまさにそれを目の当たりにしている。患者の予約数が今年に入り139%増えたばかりか、加入を希望する医師も「1000人待ち」の状態だという。
不安やうつの訴え急増に対応へ
遠隔診療サービスを提供する企業は米国で過去10年に何十社も誕生しており、ドクター・オンデマンドに限らず、ほかの企業もパンデミック中に業績を伸ばしているようだ。たとえば、アムウェル(AmWell)は5月に1億9400万ドルを調達し、テラドック(Teladoc)は今年初めから株価が着実に上昇している。
とはいえ、ドクター・オンデマンドは遠隔診療分野で一貫してイノベーティブな存在であり続けてきた。2017年には遠隔診療企業として初めて臨床検査事業に参入。最近も、メディケア(高齢者向け公的医療制度)のプログラムのうち、外来診療などがカバーされる「パートB」の受益者約3300万人を、遠隔診療大手の先陣を切って自社のサービスを利用できるようにしている。
ドクター・オンデマンドは保険の払い戻しから収益を得ているが、保険に入っていない患者も自己負担でプラットフォームを使えるようにしている。また、医療保険のヒューマナや小売り大手のウォルマートを含む大手企業と提携して、その従業員が遠隔診療を受けられるサービスも提供している。
ファーガソンによると、調達した資金はテクノロジーの増強のほか、ストレスや不安、うつといった症状を訴える患者が増えている現状を踏まえ、メンタルヘルスサービスの拡充にも用いる予定。今回のパンデミックが始まって以降、不安やうつに関連した訪問は85%も増えているという。このほか、従業員や医師の増員も計画している。
ファーガソンは、創業からCOVID-19のパンデミックまでの期間を「7年間リハーサルを積んで、ようやくステージ初日を迎えたようなもの」と表現し、「今、かつてないほど当社のサービスが求められている」と続けた。