英マンチェスターを拠点とするブーフーは、傘下に複数のブランドを持つオンライン小売業者。そのブーフーから衣料品の製造を請け負っている縫製工場で、労働者が「奴隷労働」を強いられていると報じられ、当局による調査が開始されたことが主な理由だ。
英紙サンデー・タイムズは7月5日、潜入取材に基づく記事を掲載。ブーフーのサプライチェーンにおいて重要な位置付けにあるレスター市の縫製工場「ジャスワル・ファッション・ファクトリー」では、労働者が時給3.50ポンド(約475円)で働かされていると伝えた。英国の25歳以上の労働者の法定最低賃金は現在、時給8.72ポンドだ。
また、レスター市では新型コロナウイルスの感染が再び拡大しており、6月29日から都市封鎖が実施されている。それにもかかわらず、この工場では必要とされる衛生管理を行っておらず、ソーシャルディスタンスも確保されていなかったという。
ブーフー側は、サプライヤーに提示している行動規範が守られていないことが確認されれば、その企業との契約を打ち切ると表明。勅撰弁護士に依頼し、独自の調査を行うと発表。さらに、“サプライチェーンにおける不正行為を排除” するための対策に、1000万ポンド(約13億5000万円)を支出すると約束した。
だが、ブーフーが受けたダメージは、すでにかなり大きなものとなっている。株価はサンデー・タイムズの報道を受け、翌日から大幅に下落。時価総額はわずか2日で、およそ10億ポンド減少した。ブーフーと子会社の株式を所有するアマゾンは、調査が終了するまでサードパーティーが取り扱うものも含め、ブーフーと関連会社の商品の販売を一時中止とすると表明している。
ソーシャルメディア上では、多くの人がブーフーとその傘下にあるブランド、「プリティ・リトル・シング(Pretty Little Thing)」、「ナスティ・ギャル(Nasty Gal)」「ミスパップ(MissPap)」「カレン・ミレン(Karen Millen)」「コースト・ブランズ(Coast brands)」などの商品をボイコットすると明言。ブーフーを厳しく非難している。
指摘は以前から
一方、アパレル産業に従事する労働者の環境改善を目指す非営利団体、レイバー・ビハインド・ザ・レーベル(Labour Behind the Label)はこの問題が伝えられる以前から、ブーフーに批判の目を向けていた。
ブーフーのサプライヤーであるレスター市内の縫製工場で働く労働者の一部が、新型コロナウイルスに感染した後も出勤を命じられていたなどとする報告書を公開している。
これに対してブーフーは、「どのような規則違反も容認しないが、特にわが社のサプライチェーンにおける労働者の待遇に関しては、規則違反を許すことはできない」と述べていた。