ビジネス

2020.07.15

タクシー運賃にも柔軟性を。「ダイナミックプライシング」の可能性

Photo by Future Publishing / Getty Images


次にタクシー会社と乗務員にとってのメリットについて考えてみたい。前述の通り、ダイナミックプライシングにはピーク時、オフピーク時のばらつきを平準化する効果がある。

これにより必要な台数の変動が少なくなるため、待機車両を減らすことにつながる。タクシー会社は効率的に配車することが可能になり、コストの削減が期待できる。

また、乗客を乗せずに走る時間が少なくなれば、無駄な燃料の消費は抑制され、タクシー会社の収益向上に寄与することは言うまでもない。

こうして最大化された収益は乗務員に還元され、また待機時間による乗務員の長時間労働も改善されれば、乗務員不足の改善にもつながるだろう。

タクシー会社は、人員の乗務員の勤務シフトをより柔軟に組めるようにもなり、全産業平均に比して長いタクシー乗務員の勤務時間は改善していくことにつながる。

都市交通全体にとっても効果的だ。ピーク時のタクシー利用の集中が分散されるため、渋滞の緩和が期待できる。

海外では、タクシー運賃へのダイナミックプライシング導入を巡る議論が活発だ。今年の1月31日にニューヨーク市議会の特別チームが発表した報告書は、タクシー料金にダイナミックプライシング導入することを提言している。

また、全米経済研究所によると、2015年に米国でダイナミックプライシングによって生み出された消費者余剰(消費者が得る便益)は、合計68億ドルに上ったとされている。

日本では現在、国土交通省が変動制迎車料金の導入を検討している。これは、時間帯や状況に応じて迎車料金を段階的に変動できる仕組みだ。ダイナミックプライシングとは異なるが、これを契機として、本格的なダイナミックプライシング導入に向けた議論を、当局、タクシー業界との間で喚起できればと考えている。

文=山中 志郎

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