ヤマグチ:おお、また面白い観点が出てきましたね。なぜクリエイティブな仕事になると思うのですか?
杉浦:シンプルに「“ヒト”が一番分からないから」です。
先ほどお話したように、働き方の多様化に伴って会社がコミュニティのようになると、働く人たちに「なんかいいな」と思ってもらう魅力やカルチャーを作るのが、これからの人事の仕事。
そうすると、「その会社で働いている人たちに何を提供できるか?」をデザインしていく能力が求められていくものの、その答えは各個人(=ヒト)によって様々になるわけじゃないですか。
これほどまでに答えが良い意味で存在しない仕事は、きっと機械に取って代わられることは早々無いはずだと思っていて。
ヤマグチ:コーポレートブランディングの観点からしても、それは非常に納得なお話ですね。
それこそ、杉浦さんがよく言葉にする「答えは自社の中にしかない」はまさにそうで、その企業の思想・哲学は他社は真似できないんですよね。
同じ経営者なんていないし、同じ過去や原体験を持つヒトなんて世界中に1人もいないから。
だからこそ、ミッション・ビジョン・バリューは企業のコアを形成する非常に重要な要素ですし、それを体現するために一気通貫で各施策をやらないと、その企業哲学というデザインは完成しないと思っています。
杉浦:今のお話を分かりやすく採用にだけフォーカスすると、当たり前のことを単純にできていないところが多いなと感じることは多々ありますね。
「若い人が多い企業です!」と言いながら1次面接でいきなり年配の面接官が出てくると、本当にそういう組織なの? と思われてしまい、企業の意志が伝わらない。
だからこそ、「自社って改めてそもそもどういう存在なのか?」を見極めて伝える努力は、これからの人事に強く求められるのでしょうし、それに付随する「デザイン思考」や「美意識」をどれだけ鍛えられるかが他社との差別化になっていく予感がしますね。
──「自社の中に答えはある」
口にするのは簡単だが、自社を見つめ直すことは、正直なところ非常に難しい。
しかし、それがゆえに「他社にはない自社の独自の魅力を自分の頭で理解して伝える」という仕事は、ヒトを考え抜く人事・採用担当者だからこそのクリエイティブな仕事へと変化していくのだろう。
“採用ブランディング”をテーマとしたこの連載全体を通して、「企業の意志」というコアの重要性に気づき、向き合う方が1人でも増えたのならば、筆者冥利に尽きる。
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