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三井物産デジタル・アセットマネジメントの代表を務める上野貴司

「LayerXが技術にしか興味がないスタートアップだったら、協業しようとは思わなかったかもしれないですね」

そう話すのは、三井物産デジタル・アセットマネジメント(以下、MDM)の代表を務める上野貴司だ。MDMは2020年4月、三井物産とSMBC日興証券、三井住友信託銀行、そしてLayerXによる新会社として設立。ブロックチェーン技術を活用した、次世代アセットマネジメント事業で協業していく、と発表した。

そして息をつく間もなく、同月には三井物産グループ金融子会社とLayerX、投資法人みらいの協力を経て、ブロックチェーン技術を用いたセキュリティトークンを発行する「デジタル証券プロジェクト」を開始し、業界内をざわつかせた。

「アセットマネジメント」とは、資産運用目的で預かったお金を、株や債券、不動産などへ投資し、その収益の一部を手数料としてもらうモデル。2020年5月にセキュリティトークン発行が解禁になったこともあり、MDMではブロックチェーンなどの技術を取り入れ、新たなビジネスを生み出そうとしている。

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ここで注目したいのが、三井物産という大手企業が、設立2年のスタートアップであるLayerXを迎え入れた理由だ。とりわけ、金融事業となると慎重に進める必要もありそうだが、そこに迷いはなかったのか。上野に話を聞いた。

「相手がスタートアップでも大丈夫なのか?」の議論


そもそも、合弁会社の構想はいつから始まったものだったのか? 協業の話は2018年夏まで遡る。

「我々は、お客さまからお金をお預かりし、運用してリターンをお返しするのが仕事。ちょうど2020年5月にセキュリティトークンの発行が解禁されることもあり、それをアセットマネジメントに取り入れ、新たなビジネスをつくろうと考えていました。そこで、技術的な部分でお手伝いしてもらえないか、と声をかけていた1社がLayerXでした」(上野)

当初は、技術的な支援を求めるものだった。しかし、目指す事業が具体化するにつれて「それだけでは弱い」と上野は考え始める。

「LayerXと話すなかで、彼らが技術だけにとどまらず、アセットマネジメントへの理解や、デジタル化への強い興味を持つ人が多いとわかりました。ならば、インダストリーや金融のアセットマネジメントにより入り込んでいくためにも“同じ船”に乗っていただくほうがうまくいくと判断したんです。それに、システムは事業にとって大事な要素。共通の想いを持って挑んだほうがいい。そして、LayerXへ『一緒にやりませんか?』と提案しました。彼らが技術にしか興味がなかったら…この発想にはなっていなかったかもしれませんね」(上野)

言ってしまえば、委託・受託の関係のほうがシンプル。しかし、協業となると、関係性はより複雑になる。三井物産の社内では、LayerXと組むことに反対の声はなかったのか。

文=福岡夏樹 写真=小田駿一

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