ビジネス

2020.07.09

三井物産が創業2年目のスタートアップと「新会社」を設立したワケ

三井物産デジタル・アセットマネジメントの代表を務める上野貴司


「変動が少ない安心感」をつかみ取りたい


リーマンショックでもそうだったが、新型コロナウイルスによって今の株価もなかなか安定しない。出費を抑えるように、投資へも慎重になりつつある雰囲気もあるが、MDMは今の状況をどう見ているのか?

「そもそも株は、いいときは倍になり、ダメなときは10分の1になったりもする。それが資産運用の本性なのですが、はっきり言って、日本人のメンタリティとあまり合っていないんです。一方で、変動するものより、預金など減らないものには関心が高い。だからこそ、我々が取り扱おうとしている不動産やインフラ系の商品は変動が少なく、日本人にもフィット感があると思っています。

これまで不動産やインフラ系への個別投資は、プロ向けには商品がありました。しかし、個人向けの商品はまとまっていなかったんです。そこで、我々は個人向けにも商品を展開。さらに、ブロックチェーンなどのデジタル技術を浸透させれば、2〜3%など預金より高い金利をつけることも可能になる。その安心感を、私たちはつかみ取りたいのです」(上野)

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日本に眠っている資産は1800兆円と言われる。これについて「そのうちの1%でも掘り起こせたら、それはすごい可能性になる」と上野。

「金融事業にはライセンスが必要なので、まずはそういった“着実に進めるべきステップ”に半年ほどかかると思っています。そこから本格的に商品を広めていくのですが、お金に関することなので、どうしても『本当に預けて大丈夫?』と不安に思われるところからスタートします。そのため、市場価値を上げることにも、少し時間がかかります。もちろん、無駄な時間を使うつもりは一切ありませんが、私たちの商品が世の中で認められるまでには5年ほどかかるかもしれませんね」

現在、MDMの社員数は7名。今後も採用を強化していく予定だ。

「以前、私が代表を務めていた会社も10〜20名ほどだったのですが、この規模は連動性次第で1+1=5になったりする。さらに、今いるメンバーは、一人はスーツで、もう一人はサンダルで…と見た目から全然違っていて、それがおもしろい(笑)。そんな我々ですが、この段階から連動性を大事にしていれば、『この人数でやったとは思えない』と言われるほどの高いパフォーマンスを出せるはずだと思っています。

不動産アセットマネジメントに関わってきたこと、スタートアップへの投資をしてきたこと。この2つが重なって、今の私があると思っています。そういう意味では、LayerXと出会い、これまでの経験をすべて活かせるチャンスに恵まれて嬉しいですね」(上野)

文=福岡夏樹 写真=小田駿一

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