「運命の出会い」はスローに訪れる 令和のマッチング事情を考察

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注目すべきは、マッチングアプリが第三位になっているという結果だ。なお、TwitterとInstagramはそれぞれ単独で2.2%、0.6%となっている(本稿の趣旨とは外れるが、こうした場では「オンラインナンパ」が発生し、それが出会いに発展しているケースも多い)。

また、合コンが第四位になっているという結果も、若い人たちの間で「合コン離れ」が進んでいるという観測と符合するだろう。おそらく対面で会うことの楽しさよりも、コスパ良く誰と出会うかを選べることに重きが置かれている。現代の若年層の心理を考えるうえで、「選べる」という自己コントロール感はとても重要なキーワードで、合コンの魅力としての「どんな人が来るのかはその時になるまでわからない」ということが、逆に「選べない」という強いネガティブ性に負けてしまっていることを示唆しているだろう。

いまや新型コロナの影響で物理的な合コンが難しくなっていることを考慮すると、こうした傾向はより顕著なものになっていきそうだ。

この表はさまざまな出会い方のランキングTOP3をまとめたものだ。県ごとに特性が出ていて興味深いし、マッチングアプリは滋賀が1位でさすがのIT先進県という感慨を持つ。次いで「愛媛県」「岡山県」も上位にランクインした。東京や大阪といった都市圏の利用者が多そうにも感じるが、こうした地域では他の出会いも多いため、マッチングエリアの比率は低くなるとも言えそうだ──もちろん、より正確には人口ボリュームとのかけ合わせを見てみて把握する必要がある。

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※引用元:合コン1位、ナンパ1位の県はどこ?47都道府県別3000人デートきっかけ調査(合同会社SNAPLACE)

職場・学校での出会いが多い奈良県、鳥取県や鹿児島県はなんとなくまじめで堅実な出会いを志向していそうにも思える。SNSでの出会いが多い京都府や福井県、兵庫県は自分の趣味やその人の世界観、あるいは日々のシェアの実践を見て判断しているという意味で、好奇心が強い志向性なのかもしれない。

はたまた、マッチングアプリの出会いが多い滋賀県や愛媛県、岡山県は目的手段のコスパ思考がしっかりしているのかなとか、新しいことに抵抗感がないのかなとか、あるいはリアルでの出会いが相対的に不足しているのかなとか……さまざまな仮説が浮かんでくるが、その探求はまたの機会に。

現在マッチングアプリは、利用者数はもちろんのこと、そこでのアプリ課金額も抜きんでたものがある。より良い相手と出会うため、出会った相手と連絡をとり合うため、これらのアプリでは課金しなければならない設計になっているためだ。Pairsも一時は日本でトップクラスの課金額を記録したし、Tinderはグローバルでトップ5に入る課金額を誇っている。

多くが無料&広告モデルで運営されているソーシャルネットワーキングの世界において、ユーザーにサービスの対価を支払わせるという離れ業がここでは成し遂げられているという特筆性が見いだせる。ユーザーが自分に合った人を探し出すことに価値を感じ、進んでお金を払うことをためらわないからこそだ。
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文=天野 彬

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