ペットの不変性で、コロナ禍の不安を解消
帝京科学大学生命環境学部准教授の濱野佐代子さんは、新型コロナによる社会不安という大衆心理も踏まえ、よりマクロな視点で分析する。
「マスコミやインターネットの情報も影響していると思います。毎日、新型コロナの関連ニュースがたくさん報道される。そうした中で、動物を扱う番組やインターネット動画が増えてきています。これは、やっぱり人間は不安を喚起されると、解消するための行動に走るからではないでしょうか。番組や動画を見て、不安が癒される機会が増えたりする中で、もともと潜在的にペットを飼いたいと思っていた人たちの行動が喚起されるのではないかと思います」
「大衆不安によってペット需要が増加し、犬よりも飼いやすいと言われる猫の人気が高まっているのでは」という仮説は説得力がある。
濱野さんがもう一つ、コロナ禍におけるペット特有の魅力として挙げるのは、コロナ以前からの不変性だ。
「新型コロナと言っても、猫や犬はそんなこと知らないですよね。人間は過去を思い出して悩んだり、未来を恐れて不安になって落ち込んだりしますが、動物はいつもと同じように生活しています。
動物は、今のことしか考えません。例えば猫が事故で足を失ってしまったり、病気になってしまったとしても、痛みがあるうちは激しく鳴いたり怒ったりするかもしれませんが、痛みが消えたらもうそのことは考えない。明日からどうやって生きようかと悩んだり、こうすれば良かったと後悔したりはしないんです。
社会全体がコロナ情報であふれ、みんなが不安になってしまう中、猫や犬は普通に暮らしている。その姿を見ることで、日常を取り戻すことができているのではないでしょうか」
こうした「今を生きる」「この瞬間に気づく」というような考え方、つまりマインドフルネスを基にしたカウンセリングは、うつ病治療にも効くとされ、海外で取り入れられているそうだ。
私たちが「人間にとって猫とはなんぞや」といった小難しいことに頭を悩まそうと、猫たちはつゆほども気にかけない。そんな姿が人間を夢中にさせているのだろう。
人間の悩みや社会情勢について、猫は気にかけるはずもない (Unsplash)