「日本の上場企業が抱える課題として、“企業の経営管理は重要度が高いにも関わらず、生産性が低く仕組み化されていない”という点があります。業務の性質上、情報の秘匿性が高いことから、業務に関連する知見の共有が希薄であり、クラウドサービスとして本領域を集合知としていくことが重要と考えました」とログラス代表取締役CEOの布川友也は語る。
布川は新卒でSMBC日興証券 投資銀行部門へ入社し、IPO・M&Aのアドバイザリーを3年弱経験した後、GameWithへ転職。同社の経営戦略室で経営戦略、経営管理、予算策定、IR、投資の業務を担当した経験を持つ。そんな布川がログラスの創業に至った経緯は、GameWithでの予算策定の経験にある。
「予算策定の仕事を通じて、事業部と高頻度のコミュニケーションを繰り返した結果、事業部が納得して数字の細部まで意識が行き届いた状態を作ることができました。その経験を通じて、CFO・経営企画と事業部がシームレスにコミュニケーションしながら一連の経営管理が可能なプラットフォームの構築すべきだと思ったんです」
経営管理にも「GitHub」が必要だと思った
経営管理は企業において最も重要な財務数値・KPI等を管理・運用・改善する業務であるにも関わらず、大企業を中心に表計算ソフトで非効率・属人的に経営管理をしているため、企業価値の源泉である利益を適切にコントロールできていない。
多くの企業が陥りがちな問題をテクノロジーによって解決すべく、布川が目をつけたのがGit(分散バージョン管理システム)だった。
「エンジニアの世界では“GitHub”というソフトウェア開発のプラットフォームがありますが、経営企画は秘匿性が高いことから、情報がクローズドになってしまっている。結果的に非効率で属人化してしまっているわけですが、現場でバラバラに管理しているExcelを集計して、ひとつのデータにまとめる作業はあまりにも非効率。そこでGitHubワークフローの仕組みを応用し、多人数によるデータ管理や変更履歴を一元管理できる“経営管理版のGitHub”を開発してみたら、きっとニーズがあるのではないかと思ったんです」
いずれは起業したい──そんな思いを持っていた布川は、2019年5月にログラスを創業。経営管理領域の課題を解決するサービスの開発に踏み出した。“経営管理版のGitHub”は個人的な直感でニーズはあるはずと思っていたものの、確信にまでは至っていたなかったため、フェイスブックで550人が所属するCFO・経営企画コミュニティをつくり、100人以上にヒアリングし、ニーズを検証した。
「ログラスの原型となるアイデアを色んな人に話をしてみて、もちろん批判的な意見をもらうことも多くありました。そうした意見を踏まえて、アイデアをブラッシュアップしていき、一定の段階から『欲しい』と言われる比率が高まったので、『これならいける』と思い、そのアイデアを形にすべくエンジニアを探し始めました」