新型コロナでチーズ販売低迷 仏英の生産者が消費呼び掛け

スティルトンチーズ(Photo by Peter Macdiarmid/Getty Images)

フランスと英国では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によってチーズの売り上げが大幅に減少し、多くの生産者が業界の将来を懸念するに至っている。最近では新たに、英イングランドのスティルトンチーズの生産者らも消費者に支援を訴えた。

スティルトンチーズは小説『ロビンソン・クルーソー』の著者ダニエル・デフォーが1724年に「英国版パルメザン」と呼んだチーズで、多くの家庭で1年を通して消費され、原産地名称保護(PDO)も受けている。フランスのシャンパンがシャンパーニュ地方でのみ生産されるのと同じで、スティルトンもイングランドのノッティンガムシャー、レスターシャー、ダービーシャーの3州で地元産牛乳を使い作られたもののみを指す。

英紙タイムズがスティルトンチーズ生産者協会(SCMA)の話として伝えたところによると、パンデミックによって大規模イベントや生産者市がなくなり、輸出も減ったことで、年間8000トンある生産量は30%減少した。

スティルトンチーズの生産・輸出許可を得ている製造所は6カ所だけだが、米国ではエアバスとボーイングの争いを理由にトランプ政権が導入した貿易関税により、欧州連合(EU)から輸入されたチーズの価格が25%上がっている。

また、スティルトンチーズ生産企業に牛乳を提供している70の酪農生産者が牛乳の大量処分を強いられることを懸念する声も多く上がっている。さらに、生計を立てるのが難しいという理由で若い世代がチーズ生産者になるのをやめる可能性を懸念する人もいる。

SCMAのロビン・スカイルズ会長は英BBC放送に対し、「英国の人々が、輸入ブルーチーズの代わりにスティルトンチーズを買い、英国の酪農生産者を支援してくれることを望んでいる」と述べた。

ブリーとロックフォールが5000トン余るフランス


フランスでは、ロックダウン(都市封鎖)によって貯蔵室で長期間放置されたことで偶然に新しいチーズが生まれたというまれな成功話もあるものの、多くのチーズ生産者は苦難を強いられてきた。

英紙ガーディアンによると、ルブロションやサンネクテール、マンステール、ブリー、ロックフォールといったチーズは売り上げが60%減少し、損失額は1億5700万ユーロ(約190億円)に上っている。

仏政府は4月、商標登録されたチーズの生産方法に関する規制を緩和し、牛乳やチーズを保管できる期間を延長した。

5月には、業界団体がフランス国民にチーズをもっと食べるよう懇願。酪農製品の原産地呼称に関する全国協議会(CNAOL)のミシェル・ラコスト会長は米CNNテレビに対し、チーズ生産者が5000トンの過剰在庫を抱える恐れがあると語った。

多くの人はロックダウン中、より長持ちするエメンタールなどの量産型チーズを購入した。チーズの80%ほどは、2カ月以上保管ができない。

編集=遠藤宗生

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