グーグル発の「気球インターネット」Loonがケニアで商用化

LOON

世界では今も38億人もの人々がインターネットに接続出来ずにいるが、その状況にも変化が訪れそうだ。イーロン・マスクのスペースXは、地上約300キロの軌道に小型衛星を送り込み、衛星インターネット網の「スターリンク」を構築しようとしているが、グーグルの親会社であるアルファベット傘下のルーン(Loon)は別のアプローチで、インターネット接続をもたらそうとしている。

かつて、グーグルの「プロジェクト・ルーン」として始まったルーンは、成層圏を飛行するバルーン(気球)を活用し、インターネットが普及していない遠隔地にネット接続をもたらすことをゴールとしている。

ルーンは7月7日、高高度気球によるインターネットサービスの提供をケニアで開始したと発表した。同社はケニアの携帯電話事業者Telkom Kenyaと提携し、上空1万8000メートルに浮かぶ約35機の気球からネット接続を提供している。提供エリアは首都ナイロビを含む約7万8000平方キロメートルで、3万5000人以上の人々がネットを利用可能になった模様だ。ルーンのサービスの商業展開は今回が初という。

気球からネット接続をもたらす上で課題となるのが、突然の嵐や雨など予想外の天候の変化への対応だが、ルーンはAI(人工知能)でこれらの課題に対処している。同社は100万時間以上に及ぶテスト飛行によって、マシンラーニングのナビゲーションの仕組みを完成させ、気球に自律飛行を学ばせたという。

ルーンのCTOのSalvatore Candidoによると、それぞれの気球は高度や位置を自律的に調整し、飛行にふさわしいポジションを探り当てるという。この仕組みでルーンは30分に1個の新たな気球を投入し、各気球は最大100日間稼働するという。また、各気球のネット接続の提供エリアは最大1万平方キロに及び、従来の基地局の200倍の面積をカバーできる。

気球の電力はソーラーパネルで賄われ、役目を終えた気球はパラシュートで地上に帰還し、再利用されるという。

ルーンは自然災害などで地上の基地局がダメージを受けた場合にも威力を発揮する。昨年、ペルーで大地震が発生した際には、ルーンの気球が現地に急行し、被災地にインターネット接続をもたらした。また、2017年にハリケーン・マリアがプエルトリコを襲った際にも、ルーンの気球が20万人の人々にネット接続を与えていた。

ルーンの気球インターネットは、スペースXのスターリンクよりも低コストで、柔軟なオペレーションが可能だ。

ルーンCEOのAlastair Westgarthは次のように述べた。「当社のテクノロジーはまだ発展途上であり、解決しなければならない課題も多い。しかし、今回のケニアのプロジェクトで、ネット接続の第3のレイヤーが開けたことになる。これまでの成果を未来への足がかりにしていきたい」

編集=上田裕資

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