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旅する“元”広報

移動が制限されるコロナ期における「マイクロツーリズム」としてはもちろん、アフターコロナの観光のあり方としても参考になる事例があります。

嬉野茶時(うれしのちゃどき)」という、佐賀県嬉野市の名産である「茶」「焼き物」「温泉旅館」に従事する若手経営者が一体となって創出したイベントです。

市内の異なる産業に従事する人たちが協同で、自分たちの地域にある魅力開発を行い、市民から高い評価を受け、ついには東京や他の産地にも展開しています。

温泉は最強のコンテンツ。でも、それだけでは生きていけない


佐賀県嬉野市は九州の北西部にあり、佐賀空港、長崎空港、福岡空港の3つの空港からのアクセスが可能です。名産は日本三大美肌の湯の「温泉(嬉野温泉)」、「お茶(うれしの茶)」「焼き物(肥前吉田焼)」などがあります。

温泉は観光における最強コンテンツです。それが美肌の湯とくれば、温泉好きな観光客がこぞって訪れると思うのですが、実はそうでもありません。

嬉野は、かつては九州全域はもとより山口県などの中国地方からも観光客がくる人気の観光地でした。ですが、それも1990年ごろまで。

嬉野市の資料によると83軒あった旅館は32軒になり、120万人を超えていた宿泊者数も60万人という状態です。この状況は他の温泉地でも同様です。地方に行った時に廃墟と化したホテルや旅館を目にしたことがある方もいるでしょう。約20年間で全国の約4割の旅館が廃業しています。

私の経験上ですが、温泉だけで経済を成立させるのは難しいと思います。

また、名産品が観光のコンテンツになるとは限りません。日本茶は旨味と爽やかな香りがあり、作法もふくめて心を落ち着ける嗜好飲料として、若い人たちからの支持が高まっています。

東京で日本茶を飲める店が増えている一方、お茶の産地で地元のお茶を飲める店は非常に少ないようです。個人的には東京にいながら大好きなお茶が飲めるのはありがたいことですが、せっかくお茶の産地に行ったのに、そこで本場のものを味わえないのは残念に思います。

ちなみに、全体としては、お茶の消費量は緩やかに減少しており、茶農家の担い手も減少。ここ10年で1割以上の茶畑が耕作放棄地へと姿を変えています。

伝統的産業である焼き物も芳しくありません。肥前吉田焼の経済規模はかつての8分の1程度。30社あった窯元も現在は8社という状況です。

文=南雲朋美 写真提供=嬉野茶時

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