ビジネス

2020.07.08 07:30

スタートアップに無知だった女性が、ベンチャーキャピタリストになるまで


その後、G1カレッジで繋がった知り合いから「うちのサービスを手伝ってくれないか?」と声をかけられ、スタートアップに参画することになった江原。当初は「あまりコミットする感じではなかった」というが、自分と同世代、もしくは若い人たちがサービスを開発し、社会に影響を与える姿がすごく刺激的で、多大な影響を受けたという。

「サービス自体はクローズしてしまいましたが、当時匿名チャットアプリ「NYAGO(ニャゴ)」を開発していたUNDEFINEDが同じフロアで働いていて。リリース1日で3000ユーザーを獲得しているのを見て、すごくカッコいいなと思いました。また、メルカリが上場するタイミングだったこともあり、スタートアップ界隈がすごく盛り上がっていて、『なんかスタートアップって面白いかもしれない』と夢が膨らんでいき、気が付いたらスタートアップ業界にのめり込んでいた、という感じですね」(江原)

江原ニーナ G1カレッジ
G1カレッジ参加時

約100人の起業家に会って見つけた「投資の軸」


約半年ほどスタートアップで働いた後、江原は次のキャリアを模索することに。同世代の起業家が活躍する姿に刺激され、自分の中にも“起業したい”気持ちが少しずつ芽生えていたが、やりたい領域や具体的なアイデアが思い浮かばず、結果的に起業への1歩を踏み出すことはなかった。だが、そんなタイミングでANRIから声がかかった。

「ANRIの投資先が増えていて、なおかつ『Good Morning Building』というインキュベーション施設を運営していたこともあり、投資先同士の交流を促すコミュニティマネージャーを探していたみたいで、中路さんから声をかけてもらったんです。VCで働くことは想像もしていなかったのですが、世の中の“負”の解決に取り組んでいる人たちや、マクロ経済の大枠の流れを読んで新しい価値を提供しようとしている人たちの近くにいて、彼ら彼女らのエネルギーを感じられる仕事はVC以外にないと思いましたし、ゼロイチのフェーズをずっと応援できる仕事は私に合っているなと思いました」(江原)

そうした思いから、2019年1月にANRIに参画。当時の肩書きは「コミュニティマネージャー」だったが、帰国子女だったこともあり、海外スタートアップのリサーチやポッドキャストの翻訳を依頼されることが多かったという。だが、そうした仕事を通じて江原は「VC側はスタートアップの何を見ているのか、を知ることができた」と言い、そこから少しずつスタートアップ、起業家に“投資する”仕事に興味を持ち始めていった。

コミュニティマネージャー時代の江原ニーナ
2019年8月にGood Morning Buildingでイベントを開催時の写真。コミュニティマネージャーっぽい仕事を少ししていたとき。

「私がANRIに入って、佐俣アンリさんや中路さんの2人が楽しそうに話している内容や、スタートアップ界隈の人たちが話す内容を横で聞いていて、スタートアップが好きな私にとってはすごく刺激的だったんです。また、全てのスタートアップが上手くいくわけではない中で、上手くいかないことが起こっても、困難を一緒になって笑い飛ばそうとするアンリさんの姿を見て、私もアンリさんのようにゼロイチのフェーズを伴走して会社を伸ばしていける投資家になりたいと思うようになりました」(江原)

私もスタートアップに投資したい──江原は働き始めて4カ月くらい経った中で芽生えた自分の思いを、佐俣に思い切って打ち明けてみると、佐俣は「それなら起業家に会ってみて、どういう起業家に投資したいのか。考えを積み重ねていったらいいよ」と快諾。一般的にVC業界はゼネラル・パートナー(GP)の下でアシスタントとして働き、投資のいろはを学んでいくが、佐俣は「自分が思ったように動いてみればいい」と裁量を与えてくれたという。

その後、江原はカフェでお茶をしたり、イベントに参加したり、とにかく足を使い起業家に会いまくる日々を送った。そして約100人ほどの起業家に会った段階で、江原は「直感的に自分が投資したいと思い起業家のタイプがなんとなく見えるようになった」という。

「たくさんの起業家に会いまくるのは大事だな、と思いました。私が最初に投資を実行したスタートアップはプロダクトがなく、アイデアしかなかった。それでも起業家の人柄が魅力的だったので投資を決断しました。そのスタイルはアンリさんのやり方に大きな影響を受けているのかな、と思います」(江原)

Good Morning Building
ANRIが運営するインキュベーション施設『Good Morning Building』
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文=新國翔大 人物写真=小田駿一

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