ビジネス

2020.07.08

スタートアップに無知だった女性が、ベンチャーキャピタリストになるまで

独立系ベンチャーキャピタル「ANRI」のアソシエイト 江原ニーナ


スタートアップ・エコシステムに多様性を


アソシエイトとして、主にシード期のC向けサービスへの投資を担当するようになってから、約1年。江原はすでに3社のスタートアップに投資を実行したほか、即決投資プログラム「ソクダン」の責任者を務めるなど、活躍の場を広げていっている。これまでの1年を振り返ってみて、江原はこう思いを口にする。

「スタートアップに投資してからの方が圧倒的に学ぶことが多く、ベンチャーキャピタリストとして成長するためには投資するしかないですね。また、有難いことに若い頃から投資させていただいているので、投資先と一緒に全員で成功したい気持ちもありますし、また早く結果を出してファンドにも恩返しをしたい気持ちもあります。

シード投資はリターンが出るまで約7〜8年かかると言われている中で、私が初めて投資したのは22歳のとき。投資の成果が出る頃には、私は30歳になっていると思いますが、30歳は人生の前半なので、私はずっとスタートアップに投資し続けている気がします。いまベンチャーキャピタリストとして見えている景色と、1年前に見ていた景色は全然違いますし、投資するたびに違う景色が見えてくる。それは今後いろんな人と知り合ったりとか、他のベンチャーキャピタリストの人から教えてもらったりするたびに見える景色は変わっていくので、ずっと変化し続けていくんだろうな、と思います。

きっと見えてくる社会の問題も変わっていくことで投資したい領域も増えていく。今も楽しいですけど、今後自分がどんな投資をできるのか、これからがすごく楽しみです」(江原)

メンタリング
パートナーの河野純一郎からメンタリングを受けているときの写真

また、江原は数少ない若手の女性ベンチャーキャピタリストとして、自身がキャリアを切り拓いていくことで、後に続く女性が増えていってほしい、と考えているという。

「VC業界、スタートアップ業界にも基本的に女性の数が少ないと思っていて。男性と女性で投資の視点も異なりますし、日常で感じる違和感や課題感も違うと思うので、ただ男女平等にすればいいという話ではなく、いろんな考え方を持っている人がいることがスタートアップ・エコシステムにとっても良い刺激になる。

やっぱり男性が多いと、VC全体のカルチャーも男性っぽくなりがちです。そのカルチャーに私もたまに合わせようとしているときがあるのですが、それは本来する必要がないこと。もっと女性が入りやすい業界にするためには、参考になるキャリアの例や自分を重ね合わせたい人のサンプルが少ないことが問題だな、と思うので、その課題は今後数年で、私たちの世代が解決していきたいですね。男性ばかりだと、どうしても若い女性は入ってきづらい感覚を抱いてしまうと思うので……」(江原)

先日から、江原はANRIの投資や寄付、自社の採用についてダイバーシティ観点で活動方針を作成するプロジェクトのリーダーに就任し、活動に取り組んでいる。また、個人的にも若い女性のエンパワーメントムーブメントを起こすプロジェクトも立ち上げ中だという。

「女性の若手ベンチャーキャピタリストは業界内でも珍しい存在だと思いますが、いろんな年齢の人がいることは良いことだと思いますし、年齢層によってリーチできる層は広がるので、私が投資委員会にかける案件は基本的に同年代の人ばかりです。私は年齢という意味でも、ANRIで一味違う価値を提供できる存在でいたいと思います」(江原)

文=新國翔大 人物写真=小田駿一

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