ライフスタイル

2020.07.12 19:00

日本人シェフも参加 コロナ下でトップシェフが「集う」コラボディナー

Getty Images


イベントの開催地となったバンコクはここ数年、政府が主導して、美食の旅行先としてのイメージ戦略に力を入れ、見事な成功を収めてきた。しかしそれは一方で、多くのレストランが、海外から訪れるゲスト頼りのビジネスモデルを構築してきたとも言える。
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国同士が分断され、海外からの客を失い、経済的に苦しくなっただけではなく、精神的なつながりも失われてしまったと飲食業に関わる多くの人が感じていた。

そんな逆境の中だからこそ、食事客、生産者、シェフ、そして、コロナ禍で職を失った人々を「つなぐ」、多くの人を巻き込んだイベントをやろうというのが、パイタワヤットさんのアイデアだった。

このイベントの価格は、配達料込みで2人で3000バーツ(1万円)~1人で5000バーツ(1万7000円)と幅広いが、4回で合計380人が参加した。
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食材などの費用を差し引いた利益は全額、低所得者層への食べ物や衣料、衛生用品を送るバンコクを拠点とする「Covid Relief Charity」に寄付された。


オンラインでつながり、思い思いに楽しむ参加者たち

パイタワヤットさんには、これを機会に、人々の食に対する考え方を、よりサステイナブルなものに変えていきたいという思いもあった。

実際、バンコクでは、今後のレストランのあり方の転換の必要性を感じ、いち早く実現しているレストランもある。

今回のコラボレーションにも参加した「Bo.lan」だ。海外からの旅行客に依存する「フーディーの目的地」から、地元客のニーズに対応する、カジュアルなレストランと食料品店、廃棄物ゼロがテーマのカクテルバーが一つの空間に存在する場所に生まれ変わったのだ。

ターゲットが変わったことで、「Bo.lan」が掲げる、脱プラスティックなどのサステイナブルな考えを、地元にも普及するきっかけにもなると言えるだろう。

今後も「ワンダーフルーツ」はサステイナブルな考えに基づいた「食べるためのストーリー」をテーマに、9月には、食とシェフ、ストーリー、音楽、エンターテイメントを統合したホテルのステイケーションパッケージなどの提供も考えているという。

今回のコラボレーションディナーは成功を収めたが、パイタワヤットさんは「このイベントは、レストランの楽しさを思い起こさせるためのもので、実際のレストランの体験に取って代わることはないでしょう」という。

ただ、これからの未来に向けて、レストランの形が多かれ少なかれ変わっていくのは間違いない。場所を超えた「つながり」を生み出す上で、食の世界でも、オンラインが大きな役割を果たしていくのだろう。

コロナ禍から生まれたこのイベントは、そんな時代の新たな可能性を示唆しているように見えた。

文=仲山 今日子

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