日本人シェフも参加 コロナ下でトップシェフが「集う」コラボディナー

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その他、アジア4位の香港のフレンチ「Belon」や、シンガポールからは、アジア5位のバーベキュー料理店「Burnt Ends」と、スリランカ人初のミシュランの星に輝いたリシ・ナレンドラシェフによる注目店「Cloudstreet」、地元バンコクの「Bo.Lan」などが参加し、フィナーレにふさわしい贅沢な顔ぶれとなった。

料理の内容は、冷菜3つ、温菜3つ、ピザ、デザート2つ。

「なるべく日本のレストランと同じ料理を提供したいとのことで、タイでは手に入りにくい食材のみアレンジし、原型に近い料理を提供するようにしました」と、「鰹のたたきグリーンカレーソース」のレシピを提供した川手シェフを始め、それぞれ自らの店「らしさ」を表現した料理のレシピを提供した。

イベントでは、アジア各国のシェフが調理を始める前に、自国の食材や食文化について紹介した。

例えば、アローラシェフは、動画でバンコクの市場を案内し、料理に使ったカスタードアップルが、母国インドではどのように使われ、今回はどのようにアレンジをしたかの紹介。


バンコクでモダンインド料理店「Gaa」を率いるガリマ・アローラシェフ

カボスを使った「生春巻き」のレシピを提供した内藤シェフは、日本の柑橘の種類や、柑橘から感じる四季について動画で説明した。

食事客は、ただ食べるだけではなく、食材の背景を知り、想像力をふくらませることで、アジアの食文化の豊かさを垣間見る内容にもなっていた。

内藤シェフは、「海外との行き来ができない中、こうした形で各レストランの食を楽しめるのは素晴らしいこと。実際に同じ空間で行うコラボレーションの熱量とはどうしても異なるけれど、これからの時代のコラボレーションの一つの形だと思います」と語った。

このコロナ禍は、外食産業において「コラボレーションは、シェフが移動して一緒に作るもの」という概念も変えたと言えるだろう。

川手シェフは、調理過程を撮影し、Zoomのスクリーンを通して、食事客にまるでカウンターで食事をしているかのような体験を提供した。

コロナ禍で、シェフによる動画配信による発信は多くなると感じていたという川手シェフは、自身も初だという動画によるコラボレーションを、前向きに捉えているという。

「現場で料理を味わうことなく、作り手に味を伝えるという遠隔ならではの難しさはあります。けれど、動画などを通して、レストランへの期待感や想像を膨らませることで、実際に足を運ぶまでの時間を楽しんでもらえると思います」


スクリーンを通し、臨場感たっぷりに調理法を説明する川手シェフ

ステイホームが長期化するにつれ、人々の中で、食事のために旅をすること、レストランに行くという感覚が、日常から遠いものになってしまう懸念もある。

自由に移動ができる日まで、食事客に、レストランの楽しさやそこで過ごす特別な時間を思い起こしてもらうことも、レストラン文化を継続していくために大切なことだ。
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文=仲山 今日子

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