コロナ禍で医師不足に拍車、米国の予測

Photo by Justin Sullivan/Getty Images

米国では、人口増加と高齢化に伴って医師不足が悪化し、2033年までに5万4000人から13万9000人が不足するようになると見られている。これにより、現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行のような公衆衛生上の脅威との闘いがいっそう難しくなるおそれがある。

医学校や大学病院のためのロビイストである米国医科大学協会(AAMC)が発表した最新報告書では、「総合医療と専門医療の両分野における不足」が迫りつつあることが示されている。

AAMC会長で最高責任者のデビッド・スコートン博士(Dr. David Skorton)は、調査会社IHSマークイット(IHS Markit)による分析に添えられた声明のなかで、「米国における医療需要の増加と、適切な対応に必要な医師の供給量とのギャップは、新型コロナウイルス・パンデミックとの闘いの継続に伴って一層明白になっている」と述べている。「コミュニティに対して十分な人数の医師を提供するという課題は、国内人口の増加と高齢化に伴って、ますます難しくなるだろう」

とりわけ不足しているのが、総合医療(プライマリケア)の医師だ。81ページに及ぶ報告書では、新たなプライマリケア・モデルが普及し、ナース・プラクティショナー(NP)やフィジシャン・アシスタント(PA)といった医療従事者による外来診療を受ける人が増えたとしても、2万1400人から5万5200人のプライマリケア医師が不足すると見積もられている。

家庭医、小児科医、内科医についても需要が増えると見られている。これは、保険金支払いにおける傾向を見た場合、集団健康(population health)マネジメントや、「バリューベース・ヘルスケア(価値に基づいた医療)」が重視されていることからだ。バリューベース・ヘルスケアとは、中軽症の疾患や怪我について、プライマリケア医院および急病診療所(Urgent care)といった外来診療所で治療を受けやすくするシステムのことだ。

今回の分析は、2019年に実施された。つまり、パンデミックが米国の医療制度を直撃する前だ。

しかしAAMCによれば、今回のパンデミックにより、最前線のプライマリケア医師を増やす必要性が浮き彫りになったという。今回のパンデミックでは、各地の都市や州が、退職した医師に緊急要請を出し、緊急治療室や外来診療所に呼び戻した。バーチャル病院で提供される遠隔医療サービスへの助力を依頼するケースも多々あった。

医学生たちの早期の卒業を認めた医学校も多い。新型コロナウイルス感染症患者を治療する医師や看護師に加勢し、専門医が専門外の治療をおこなうことで生じた不足分を埋めるためだ。

「新型コロナウイルス・パンデミックの渦中にあり、患者の治療が続いている米国医療システムでは、強力で十分な数の医療従事者のニーズがこれまでになく明白になっている」とスコートンは述べている。「特に切迫しているのは、専門医、とりわけ救命救急、緊急医療、肺疾患の専門医の不足だ」

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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