ロボットは人間の代わりに有能な「政府のリーダー」になれるのか?

ロボットが大統領を務める未来は訪れるか(Unsplash)


ロボットが持つ3つの欠点


では、私たちはなぜ政治や行政の権限をロボット政府に与えないのでしょうか。その日はやがて訪れるのかもしれませんが、少なくとも3つの潜在的な欠点について真剣に目を向けなければなりません。

まず、うまく構成されたアルゴリズムであれば、AIが持つディープラーニングの大きな可能性を最大化させますが、不完全性や議論の余地が残る、あるいは倫理的に不明瞭または一部の公開されていない情報に対して、その有用性は大きく低下するという点です。

こうした状況は、まさに主要な政策決定や外交問題での意思決定が行われなければならない場面で起こります。それは、混沌として不完全な情報が蔓延した状況かもしれません。機械学習がこうした不確実性の中で想定しているように機能できるかどうかはまだ分かりません。「ロボット政府」とそうではない政府との協議を想像してみてください。そうした状況下で意思決定はどのように行われるのでしょうか。

2つ目は、ロボットやソフトウェアの可能性を広げていくためには、相当のインフラや教育能力が必要になるという点です。そうした能力が身近なものであっても、多くの社会では人々の能力は平等ではありません。今日のハイテクバブルは、既存の格差をさらに拡大させるかもしれません。プログラマーやオペレーターがそもそも偏見を持っている場合、AIの台頭も男女格差などの分野で不平等を長引かせることにもなりえます。

3つ目の欠点は、配慮が必要な意思決定にデータや機械をより広範に使用することが、データ漏えいやサイバー攻撃、計算誤差など、別のセキュリティリスクを生み出すということです。これにより、グローバルな安定性に対する危険性への対応が、せっかちで短気な人間の業務をロボットが取って代わることで得られる利点よりも優先されるかもしれません。人間の相互作用は破壊的な結果を生み出すこともありますが、必要により紛争を早期に解決することも可能です。これは、キューバのミサイル危機から昨今のトランプ‐キム会談まで多岐にわたる歴史的な事実が証明しているとおりです。(後者については、つい数週間前に核の脅威によって進展しました。)
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文=Zeger van der Wal, Associate Professor, Lee Kuan Yew School of Public Policy, National University of Singapore; Yifei Yan LSE Fellow in Social Policy, London School of Economics

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