フォーブス ジャパン編集部 編集者


データも地方分権で


新型コロナは、日本のデジタル化が諸外国に比べて大きく遅れていることを浮き彫りにした。しかし、健康医療情報をはじめとして、AIに欠かせないデータの利用に関しては市町村などの基礎自治体、関係機関、住民とのコンセンサスが不可欠だ。その壁をいかに乗り越えていくのだろうか。中国では国家権力が、米国ではGAFAといった巨大IT企業が個人情報を握っている。「これからは日本でも個人情報の議論をもっと進めていかなければならない。コロナがそのきっかけになると思っている」と坪田は言う。そして「私は、アフター・コロナにおいては自治体こそがデータ民主主義の主役になると確信しています」と断言する。

「これまで地方分権の議論は、責任と権限の分担があいまいだった。しかし、今回のコロナ対策で、自治体は国民の命にかかわる対策や、経済崩壊にかかわる休業要請という重い決断をした。大阪をはじめ、多くの自治体がそれをやり遂げた。むしろ、痛みも含めて肌感覚が分かる身近な自治体がやった方がうまくいくと国民は知ってしまったのではないか」と坪田は言う。

「大阪府においては、透明性を高め、基準をはっきりさせる。感染症対策であれば、公益のためとはっきりと限定すれば協力してくれる人は多いのではないか。セキュリティを高め、メリット、デメリットをはっきりと提示した上で自発的に選択できることを条件にする。そういったことをクリアできれば、信頼できる身近な自治体であれば、情報を任せてくれると思います」。

これまで、地方におけるスマートシティへの取り組みは単発的な「社会実験」で終わっていた。採算が取れない事業は交付金が切れると、民間企業が撤退してしまうからだ。過疎地域での自動運転バスなど公共性の高い事業は、もれなく採算が取れない。東京のようにお金が潤沢ではない地方は、公金を投入できない。

坪田は、採算・不採算部門も含めて大きな事業体として運営していく、いくつかの民間企業と行政による「共同体」を想定し、これから参加を募るという。データにおいても、マーケットを可視化し、異なる企業間のデータを行政が仲介して新たな価値を生み出していくような、そんなエコシステムがつくれないか画策中だ。

しかし、社会や公益に利する形での持続可能な社会実装は、住民、民間企業、行政、政治、ソーシャルセクターがメリットとデメリットを理解した上で前に進めていく、コロナ対策で求められたものと同様の高度な透明性とコンセンサスが求められる。それが地方自治体にはできるのだろうか。

大阪のコロナ対策の例から言えば、鍵を握るのは市民や民間企業の社会に対する「安全」や「公益性」への高い意識、そして行政との信頼関係だ。他の国にはない「日本モデル」のデータ民主主義が成功するかどうかは、これからにかかっている。

編集=岩坪文子

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