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2020.07.08 08:00

【独占】ダイソンの掃除機を仕切る男が、アジア拠点の意味を語る

シンガポールの自宅から取材に応じてくれた、ダイソン フロアーケア バイスプレジデント ジョン・チャーチル

シンガポールの自宅から取材に応じてくれた、ダイソン フロアーケア バイスプレジデント ジョン・チャーチル

「いや、こちらは今日、とても暑くてね。ちょっと汗を拭かせてもらおう」。快活で、笑顔があふれる、ダイソン バイスプレジデントのジョン・チャーチルは、シンガポールの自宅から、リラックスしたTシャツスタイルでTV会議の画面の前に現れた。
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では、お話いいですか──? その問いに「何を聞かれるかドキドキするね」と返す。シンガポールを拠点とするダイソンの中心人物の一人とは思えない “きさくなお兄さん”、そんな印象だ。

ダイソンは6月22日、日本向け新商品として、新しいコードレスクリーナー「Dyson Digital Slim™️」を発表した。同日はコロナ禍のためオンラインでの発表会だったが、メディア向け、そしてインスタグラムを使った一般の人へのお披露目ともに、多くの視聴者が集まった。憧れの家電の域にある同社の人気は健在だ。

掃除機のカテゴリーであるフロアーケア部門のトップであり、バイスプレジデントであるジョンへのインタビューは希少な機会だ。冒頭よりゆるやかな空気につつまれ、しかし、製品の話になると一気に言葉があふれてくる。製品へのこだわりや思い、そしてシンガポールが研究開発の重要な拠点の一つである意味。多くを語ってくれた。
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ものづくりに費やす熱量と、「年」単位の注力


新製品Dyson Digital Slim™️は「日本向け」だ。この発表に2年もの月日が費やされたという。プロトタイプを市場でカイゼンする昨今のスピード時代とは明らかに真逆な時間軸。それは人気商品という「余裕」の裏返しか?ジョンの表情が変わる。

「まず、私たちの設計方針について話しましょう。『妥協のない製品づくり』というのはジェームズ・ダイソンが私たちに教えてくれたテーマです。そして、私も妥協しない。エンジニアでもある私は、設計するときにはどんなものでも時間をかけます。シンガポールのチーム全体が、完璧な製品になるまで設計を続けるのです」

溢れ出る言葉の波が押し寄せる。ジョンのステージの始まりだ。

「今回は、まず、重いものにしてはいけないと考えました。日本の住環境、生活環境を理解するのに7年は要しています。畳の部屋もあれば絨毯もある、床暖房もある、そんな情報はもちろん、日本の高齢化社会の現状、床に落ちている髪の毛を全て拾いたいといった心理、そして、日本の男女の生体的なデータをもとに、長さや重さを市場調査もしました。日本で使うことを前提にするとコンパクトで軽いものが求められるのです」

ジョン・チャーチルの写真
ジョン・チャーチル|ダイソン バイスプレジデント フロアーケア 2001年の入社以降、フロアーケア、空調家電、ハンドドライヤー、さらにロボット掃除機などカテゴリーを超え50以上ものテクノロジーおよび製品開発に従事。

エンジニアとしての性質とダイソンのポリシーが濃密なものづくりの時間を生む。

「エンジニアとして取り組んだのは、性能を落とさないでどれだけ軽量化するか。軽くすることでバッテリが小さくなったり、モーターの機能が下がったり、フィルタが小さくなることで使用時間や集塵力が下がるかもしれない、ただそういう妥協はしたくない。そこでパーツの数を減らしながらどのようにして性能を実現するかに取り組んだわけです」

同社はシンガポールの拠点に、技術センターである「SINGAPORE TECHNOLOGY CENTRE」」を2017年に完成させており、その場所には多くの頭脳が集まっている。

「これまでの設計開発の経験、計算で得られたデータなどの分析を行うことで仮想モデルをたくさんつくりました。性能を妥協せずに軽量化を図るために繰り返し行うのです。試作品は2300を超えました。製造の段階でも、信頼性、耐久性、品質テストを重ねるのも当然です。また、高いパフォーマンスのために、例えばクリーナーヘッドのブラシのバーは航空機に使用されるアルミと同じ素材ですし、モーターを内蔵しているのですが、それもさらに小さくする、あらゆるフェーズで妥協のない取り組みがあるのです」
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文=坂元耕二 写真=西川節子(モニター・比較・ラインナップ)

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