ビジネス

2020.07.08

【独占】ダイソンの掃除機を仕切る男が、アジア拠点の意味を語る

シンガポールの自宅から取材に応じてくれた、ダイソン フロアーケア バイスプレジデント ジョン・チャーチル


シンガポールに在るという意味


ダイソンは、本社機能をイギリスからシンガポールに移転した。2017年、多くの人が驚いたニュースだった。当時は、ブレグジットにともなう税制上のメリットのためという後ろ向きな見方の記事も多く書かれた。確かに、何千キロも離れた極東に移転というのは、驚き以外に相当な理由が思いつかなかった。しかし、シンガポール本社の顔であるジョンは、まったく違う視野の広さを示してくれた。

「ここは戦略的拠点として最適な場所です。そもそも生産の多くはアジアで行っていて、マレーシア、フィリピンで生産し、モーターはシンガポール、さらにソフトウェア開発は上海、というように。コンテナ取扱量世界2位の巨大な港(シンガポール港)もある。サプライチェーン、オペレーションの点で申し分ない立地なのです」

そして同国は海外資本の投資にも積極的だ。

「政府の支援もあり企業の投資も奨励されている環境があります。最も重要なことは、ビジネスが成長している場所に存在している、ということなのです。アジア全体で見れば特にこの3、4年、急速にマーケットが成長しています。サプライチェーン、人材、ビジネスのしやすさ、政府との長期的的戦略、それらを紐づける地理的位置づけ、成長している地域に在るということが重要な要素となっているのです」

アジアで9年仕事をしているジョンの肌で感じる事実だ。

「繁栄したいなら、まず、みなと同じ場所で息を吸って生活することが大事。9年間変化を見続けてきて強く思うのです」

家電メーカーではなくグローバルテクノロジー企業として


ジョンは、興味深い比較も教えてくれた。中国では掃除機の音はあまり気にせず、パワーやパフォーマンスを求め、色に関してもカラフルで明るいトーンを好み、そして現在ではロボット掃除機の需要に発展しているという。韓国では、日本同様に細かいホコリを取りたいと思い一番パワフルなマシンを望む。と同時に、拭き掃除を好むという。

このような特性は国ごとに違いが見られ、マーケティング要素はエンジニアとしても理解しなければならないという。そして、なによりアジアでダイソンの主力商品であるフロアーケア(掃除機)を統括する立場のジョンは、エンジニアだ。

新製品のラインナップを手に取ってみる
Dyson Digital Slim™️ は4つのラインナップが用意されている。

「エンジニアが課題を理解しなければならないのです。そうでなければ市場が欲しいものを提供できないからです。単に技術だけでなく、消費者が何を重視しているかを理解し、市場のエキスパートとして製品開発を進めることが必要なのです。現在では、シンガポールと上海にソフトウェアの開発拠点があり品質向上のフィードバックを各国からネットワークし、トライアルを試したりもしています。エンジニアを市場に送って実際に使って試すことも行います。実際に求められる製品を売るにあたり、本当に市場に求められているものを、同時に既存の製品とは全く違う製品を出さなければならない。エンジニア自らがニーズを形にするのです」

ダイソンジャパンでは、今回の「日本向け」新製品Dyson Digital Slim™️コードレスによって、コードレス掃除機全体で7―12月の昨年対比販売金額20%アップを目指しているという。日本を理解し、ニーズを知り、試行錯誤でエンジニアたちが作り上げた製品は、すくなくとも日本の消費者の声に応え、ものづくりの熱を与えることだろう。

Dyson Digita Slim™️についての詳細はこちら

文=坂元耕二 写真=西川節子(モニター・比較・ラインナップ)

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