エディター、ライター

「時計については、私は和の中で生きておりますので“お茶室”という意識があります。お茶室には炉と風炉があります。寒い季節にはお客さまに炭を近づけ、暖かい季節になると炭をお客さまから遠ざけます。もちろん、着物も道具もかわっていきます。それは時を愉しむことでもあるのです」

丸山嘉桜さんは開口一番、こう話してくれた。

丸山さんは、かつて京都の老舗料亭『菊乃井』や『和久傳』で料理長を務め、現在は『祇園丸山』『建仁寺祇園丸山』のオーナー料理長。市川海老蔵主演で2013年に公開された映画『利休にたずねよ』の料理を監修するなど、文字どおり京都料理界の重鎮である。そして、若いころには裏千家名誉師範、西脇宗妁に師事した茶人でもある。

そんな、洗練された日本文化と美意識に精通した丸山さんにとって“時”とは、どういうものなのだろうか。

「愉しい時は、香りがあったり、色があったり。そして、早く過ぎていくんです。だから時計は見ないのです。しかし、ちょっと辛い時は、時間が悪さをして長く感じる。だから、あとどれだけ時間が残っているのかと、何度も時計を見てしまいます」

そうすると、時計を見る時とは苦痛な時ということになるが。「愉しい時は時計を見ないのに、過ぎ去った後に時計を見ることによって生み出される時間がある。それが愉しい時間です。ただ、それはこのクレドールのような腕時計を着けてないと出てきません。それはすごく不思議なものやな、と思うのですが」  

その“愉しい時”を生み出すモデルはクレドール「シグノ」。プラチナ素材の逸品だ。初めて見たときは「まさに伝統工芸だと思い、すごく感動した」という。「宝石の輝きだけに頼ることなく、全体が輝いているように感じられる時計ですね。輪島塗のお椀のようで、豪華さよりも物としての美しさを感じる。私の中では、時計は機能的なものと、愉しみを含んだものがあると思ってます。この時計はテンプの中で部品が揺れてるさまが見えます。それは、まさしくこれを着けてる人の心ではないかな、と。そういう時計だと思ってます」

だから、絵画を見に行くとか、オーケストラを聴きに行くとか、自分だけが愉しむ時は、必ずこのクレドールを身に着けて出かける。

「もちろん、行ってるときはまったく見ません、でも外したときにこの時計と愉しい時を過ごしたことを思い出すんです。不思議なもんやねぇ」

photographs by Kazuya Aoki | text by Ryoji Fukutome | illustration by Adam Cruft | edit by Tsuzumi Aoyama

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