TikTokがファーウェイと並ぶ「米国の敵」に認定される可能性

Photo by Chesnot/Getty Images

インド政府は先週、「TikTok」のユーザーに対し、アプリを削除するよう呼び掛けた。今回の問題は同社の業績に深刻な打撃を与える可能性がある。

「中国政府からインド人ユーザーのデータを要求されたことはない。今後、そのような要請があっても我々は従わない」とTikTokのケビン・メイヤーCEOは述べている。同社によると、ユーザーデータはシンガポールのサーバーに保存されており、中国政府がアクセスすることはできないという。

中国政府系メディアによると、TikTokの親会社であるバイトダンスは、インドでのユーザー基盤拡大にこれまで10億ドルを投資してきたが、数億人のユーザーを失うことにより、損失は最大60億ドル(約6460億円)に達する可能性があるという。

当初、インドでの禁止措置によって影響を受けるのは新規インストール数だけだと考えられていた。TikTokのインドでのダウンロード数は、5月に米国の2倍である1億ダウンロードを記録している。しかし、その後既存ユーザーのアクセスも禁止され、インド国内のインフルエンサーやTikTokスターたちの収入が絶たれることが明らかになった。

TikTokは新型コロナウイルスの感染拡大を追い風に急成長を遂げてきた。しかし、インドでの禁止措置を契機に、同社に対する規制が他地域にも拡大する可能性が指摘されている。

米国のマイク・ポンペオ国務長官は、TikTokをはじめとする中国製アプリが中国政府による監視活動に利用されているとし、インド政府による禁止措置を歓迎している。

TikTokが恐れているのは、ファーウェイのようにトランプ政権による攻撃のターゲットとなり、同社の米国事業が打撃を受けることだ。

インドが禁止措置の対象としたのは、TikTokを含む59の中国製アプリだ。しかし、TikTokが被る経済的打撃は、他のアプリの合計損失額を上回る規模だ。アップルがiOS 14のベータ版を公開した際、多くの人気アプリがユーザーのクリップボードを密かに読み取っていることが明らかになり、TikTokがやり玉にあげられた。

米政府は、TikTokについて安全保障上のリスクがないか調査を行っており、他国も追随するとの報道がある。TikTokは、欧米でユーチューブやインスタグラムと競合しながら、中国製アプリとしては異例とも言える成功をおさめてきた。

TikTokに対する批判は、大きく2つに分類することができる。1つは、同社がユーザーのプライバシーと安全を十分に保護していないという点だ。若年層ユーザーの被害を懸念し、米政府は同社に罰金を課し、英政府も警告を発している。
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編集=上田裕資

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