米ネブラスカ大学医療センターの疫学教授である筆者は、米国で感染者が確認される前の今年2月11日、ロイターに対し、その時点での各国での感染の広がりからみて、この病原体は閉鎖された環境において「感染力が非常に強い」こと、「容赦なく感染を拡大させていくものであり、個人用保護具と手指消毒剤の使用方法を誤ることは、一切許されない」ことを説明した。
それ以来、“敵”であるこのウイルスと、感染に関する基本は何も変化していない。そして、新規感染者が増加することは、驚くことではない。この問題を無視、または経済活動の再開をあまりに積極的に推進した州が今、その代償を払い、再開させる以前の状態に戻ることを余儀なくされているのだ。
感染の第1波で大きな打撃を受けた米北東部の州はもう少し慎重に対応したため、新規感染者数は現在、減少、または増えても安定した状態にある。危険にさらされているのは、感染拡大を抑えるための原則を無視した人、州、そして政府だ。
ウイルスは“エイリアン”
たとえば、ウイルスを私たちの体を乗っ取ろうとする宇宙からきたエイリアンだと考えてみればいい。そのウイルスにはたった一つの目的しかない。“繁殖”することだ。それらは私たちの細胞を乗っ取り、次から次へと“子孫”を作り出すようにプログラムされている。そして、人を選ぶことなく、誰にでも感染する。
ウイルスが侵入すると、私たちの体はウイルスの働きと、自分の免疫系とウイルスの激しい戦いの影響に屈することになる。体はコントロールを失い、ウイルスが増殖するための“器”になる。
新型コロナウイルスだけではない。これまでにもその他の感染症によって、同じようなことが繰り返されてきた。公衆衛生上の対策が緩和されれば、病原体は、そのことによって生じた抜け穴を利用する。予防接種率が下ると「はしか」が流行するのが、その一例だ。