親子2世代で叶える米国移民の「アメリカン・ドリーム」

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米国の経済と未来を支える若き移民たちの実像は。『The Gift of Global Talent 』(『グローバル人材という贈り物』未邦訳)著者に話を聞いた。


──米国では労働力人口の15%が移民で、移民起業家は全起業家の25%だそうですね。

移民が米国に惹きつけられる背景には、まず、米国の巨大な市場に参入できるというメリットがある。また、その市場が、えこひいきなどではなく、法の支配に立脚しているため、ベストアイデアを持つ人材と競えることも魅力だ。租税構造も起業家に有利だ。

移民を取り巻く状況は、過去40~50年間で様変わりした。1975年当時は欧州からの移民が大半だったが、その後、中南米に続き、アジアからの移民が大幅に増加。起業におけるイノベーションでは、中国・インド出身者が目立つ。また、中南米移民の急増により、カリフォルニア南部やフロリダのヒスパニック系コミュニティーで起業が増えた。

そもそも、祖国を離れて米国を目指すような人はリスクが付きものの起業活動やイノベーションに向いている。テクノロジーの普及も(IT関係の)起業を後押しした。

──米国で起業する移民の特徴は?

スキルや教育レベルの点で、実に多様だ。博士号保持者も多いが、高校を出ていない人もいる。中国系とインド系の貢献が際立っているのは、特許やイノベーション関連の先端コンピューティング・ソフトウェア分野など、テックセクターだ。ベンチャーキャピタルから資金を得ているスタートアップでも、そうだ。

──短期就労者用のH-1Bビザとは?

企業などがスポンサーになって申請する、大卒以上の労働者向けビザだ。年間発行枠数は8万5000件で、学士号保有者の枠は6万5000件。修士号以上が2万件だ。期限は最長6年間。

同ビザの最も重要な点は、米企業が高スキルの外国人を雇えることだ。コンピュータ科学など、工学関連の専門分野における申請が7割くらいを占め、テック企業が圧倒的な恩恵にあずかっている。

同ビザは米経済の重要な部分を担っている。かつて発行枠数が1万9500件に引き上げられたことがあったが、H-1Bビザを積極的に活用した企業や、その企業を擁する都市で、イノベーションが増えた。
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インタビュー=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN 6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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