起業家と和尚が禅・メディテーションアプリを開発した理由

新型コロナウイルスの感染拡大により、先行きの見えない状況が続き、不安やストレスを抱えている人は多くいる。そうした人たちの不安やストレスを少しでも解消すべく、昨今、京都を中心にいくつかの禅寺が“オンライン坐禅”を実施している中、新たに毎日の生活に禅を取り入れるためのアプリが登場した。

トラベルオーディオガイドアプリを手がけるon the tripは2020年7月7日、禅・メディテーションアプリ「InTrip」をリリースしたことを発表した。同アプリは世界中の経営者が通う禅寺で有名な建仁寺・両足院の東凌和尚と提携し、制作されたもの。

ビジネスマンに向けた経営に効く禅プログラムや、自分の内面と深く向き合う1週間のプログラムのほか、職場や電車などの移動中、そしてお風呂やトイレの中、ベッドの上など、それぞれのシーンごとにカスタマイズされた禅プログラムが体験できるという。また4タイプの瞑想音楽(サウンドメディテーション)と、シーンごとにつくられた瞑想音楽が楽しめ、毎週実施されるオンライン坐禅にも世界中の人と一緒にリアルタイムで参加できる。

実際、コロナ禍の中でオンライン坐禅を実施したところ、500名を超える参加者が集まったとのこと。アプリは日本語と英語の2言語で展開し、オンライン座禅は毎週土曜日の朝9時から45分間ずつ、実施していく予定とのこと。

InTripについて、「禅のプログラムは改善を続けながら、コンテンツも広げていきます。また坐禅だけに限らず、サウンドメディテーション(瞑想音楽)や、ヨガと組み合わせたプログラムもリリースする予定です」と、on the trip代表の成瀬は語る。

もともと、外への旅を中心に事業を展開していたon the tripがなぜ、このタイミングでInTripをリリースすることにしたのか。成瀬と建仁寺・両足院の東凌和尚に、アプリの開発の裏側、そして今の時代だからこその“禅”の重要性を語ってもらった。

誰でも、どこでも、いつでも出来るように


──まず、InTripはどのような経緯で開発をされたのでしょうか?

成瀬勇輝(以下、成瀬):この大きな時代の流れの中で自分の内面と対峙する、内なる冒険の必要性を感じていたんです。コロナ前には、あらゆるところに行けて、外部とすぐに繋がることができた。でもこれからは、外へ旅をするように自身の内面を探索していくことが求められていく。そのように感じ、今まで温めてきたサービスをコロナ自粛のタイミングで開発に踏み切りました。なによりぼく自身、10年前にサンフランシスコの好人庵で禅のことを学んでから興味をもち、取り組んでいました。それがこの3年間のバンライフ、自然と近い生活を続けたことで、外への旅と同時に内面トリップも楽しむようになりました。

そもそも外と同じだけ、内面も冒険に満ちあふれている。だから、東凌さんとの対話で内面に旅をするのが本当に楽しくて、この旅をお裾分けしたいという気持ちが大きいです。

伊藤東凌(以下、伊藤):今までの禅の伝統的な教え方では、「ただ座ればいい、気づきを高めればいい。そうすれば、あらゆることが分かる」というように、プロセスの説明がなされていませんでした。そこを今回のプログラムでは、誰でも、どこでも、いつでも出来ることを提案して、よりわかりやすく伝えるようにしています。
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構成=初見真奈

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