著名エコノミストが明かす、コミュニケーションの3つのスキル

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英会計事務所大手のグラントソントンで首席エコノミストを務めるダイアン・スウォンクは、メディアの取材を忙しくこなしている。彼女は世界でも特に尊敬されるエコノミストの一人で、よく引用される人物だ。

米CNBCテレビから米紙ニューヨーク・タイムズの記者ら、政府関係者、企業のリーダーらは、スウォンクから世界経済について明確な見識を共有してもらうため、彼女を招待している。

私は先日スウォンクを取材し、複雑なデータを毎日の言葉に変える際に彼女が実践している戦略について話を聞いた。彼女の手法は、あらゆる分野のリーダーや教育者、専門家、ビジネスパーソンのコミュニケーションスキルの改善を支援してくれるだろう。

スウォンクは36年以上のキャリアを通し、賞を獲得したり米連邦準備制度理事会(FRB)に助言したり、非常に正確な予測を出すエコノミストとして世界中で評判を得たりしてきた。米誌シカゴによると、彼女の経済に対する深い知識がそれを“翻訳”する力と合わさり、スウォンクは「ビジネスのページの鼓動そのもの」と呼ばれた。

スウォンクの才能は、不可解で複雑な経済の言葉を人々が理解しやすい言葉に変換する能力だ。また、彼女の「翻訳ツール」には共感や比喩、うまくコミュニケーションを取ることをいとも簡単なことに見せる努力が含まれている。

1. データの裏にある「人」への共感


スウォンクは5月、CBSニュースに出演し、「現在は、私のエコノミストとしてのキャリアの中で最悪の時期だ」と述べた。

スウォンクは同番組に登場し、4月の失業報告を分析した。報告書では、米国の約2000万もの雇用が失われていることや、失業率が世界恐慌以来最悪の14.7%まで上がっていることが示されていた。

「ただ驚きだ。この危機の影響を何らかの形で受けていない人を、私は知らない」とスウォンクは語った。

スウォンクは、新型コロナウイルス感染症によるロックダウン(都市封鎖)の影響で苦しんでいる数百万人の米国人に、「声を与え証人となる」使命感を感じている。

スウォンクにとって、全てのデータ点には物語がある。彼女が非常によく知る物語だ。

スウォンクの父は、自動車業界の重役として働いていた。1970年代になり、三大自動車製造企業の売り上げが落ち始めると、スウォンクは経済の崩壊が友人やその家族にもたらした経済的な影響を目の当たりにした。経済低迷前は快適な中産・上流中産階級の生活をしてきた人たちが、いきなり貧困の中に投げ込まれたのだ。

「夕食の席で、愛する自動車業界の崩壊を見ていた父は悲しみに暮れていた」とスウォンクは語った。

こうした雇用喪失の全てには、名前や顔、家族、生活がある。こうした顔がスウォンクの頭を離れたことはない。彼女は数字ではなく人を見ている。そのため、効果的にデータを変換できるのだ。
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翻訳・編集=出田静

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