著名エコノミストが明かす、コミュニケーションの3つのスキル

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2. 比喩の技術の習得


翻訳とは、ある言語を聞き手が分かる言語に変換することを意味する。私たち全員が知っていて生活の指針としている脳の言語は比喩だ。

説得の父であるアリストテレスはかつて、素晴らしい話し手は比喩の達人だと述べた。あるものを他のものと比較することはスウォンクが習得した技術で、彼女は経済データの分析時に常に慎重に比喩を考えている。

例えばスウォンクは、米経済がロックダウンされたときと同じスピードで迅速に再開するとは考えていない。

彼女はあるインタビューで、経済がいきなり復活すると言い張ることは間違っていると述べ、「経済は一夜にして氷河期に突入した。私たちは極度の凍結状態にある。経済の解凍には凍結にかかったよりもはるかに長い時間がかかる」と説明した。

比喩は学習のための知的な近道だ。難しい話題であればあるほど、適切で記憶に残る比較を見つける重要性が増す。

3. 簡単に見せるための努力


話すだけならそれほど努力は必要ないが、人が聞いてくれるような話し方をするには多くの努力が必要だ。

スウォンクは私に「同僚にかつて『あなたがやるととても簡単に見える』と言われたことがある。こうした人は、どれほどの時間が必要かに気づいていない」と語った。「これには、非常に多くの努力が必要だ」

スウォンクは、月次の状況説明作成に最大40時間をかける。スウォンクにはディスレクシア(失読症)があるため、文章を書くことは人一倍難しい。しかしそれによって、メッセージを伝えるための適切な言葉選びにさらに熱心に取り組むよう強いられた。スウォンクの文章は創造的で読み手を引き込み、理解しやすい。

彼女は米金融サービス企業ノーザン・トラストのエコノミストだった故ロバート・デデリックに、コミュニケーションを大事にするよう鼓舞されたと語った。デデリックは、エコノミストは数字よりも人と関係があると信じていた。

スウォンクは文章を書くこと、つまり複雑なデータを説明するためにうまい言い回しをしてベストな言葉を選ぶことに、デデリックが膨大な時間をかけていたのを見ている。スウォンクはかつて「これまで私が知る限り、彼は最も引用価値があるエコノミストだった」と語っている。デデリックはスウォンクにいつまでも消えない面影を残したのだ。

「コミュニケーションの技術は、私が熱心に取り組んできたものだ」とスウォンク。「説明できなければ、全てが翻訳で失われてしまう」

言葉にする価値があるものを持っているならば、それを翻訳で失ってはいけない。

翻訳・編集=出田静

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