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「だから、バンクシーは優れたアーティストなんだ」

バンクシーは今年5月、新型コロナウイルス対策の最前線で戦う医療従事者を讃えたイラストを、自身のインスタグラムで発表。

6月にはイギリス・ブリストルでの黒人差別に抗議するデモの最中に、17世紀の奴隷商人として富を築いたエドワード・コルストンの銅像が倒されたことに対して、「銅像がなくなって欲しくなかった人も、そうでない人も満足する案」をイラストにして、インスタグラム上で提示した。

現在、ニューヨークやロンドンでは、アーティストのみならず、政治への不信感や将来への不安を抱えた一般の人がスプレーを手にとり、街の壁に落書きをしている。その動きを牽引しているのが、バンクシーのような人気アーティストなのだろうとロブは言う。

「バンクシーをはじめ、多くのグラフィティアーティストに影響を与えたヴィニー・ナイロンの展示会を計画していた時、メールだけのやりとりだったけれど、バンクシーは展示会を実現するための資金援助をしてくれたんだ。彼が展示会に来ることも期待してか、いつもより来場者が多く、東京でのバンクシーの人気に高さにも驚いたよ」

東京で活動を続ける理由


東京は他のどの街より、何かが流行れば爆発的に広まり、そして一瞬で人が忘れる、流行のサイクルが激しい街だ。

ロブ自身、2005年にイラストを手がけたイギリスのアーティスト「Basement Jaxx」のアルバムがグラミー賞を獲った直後に、その落差を経験した。

急激に多くの人からの連絡が増えたが、その一年後には、まるで何事もなかったかのように日常が戻ってきたという。

そんな「恐ろしい街」で、ロブがギャラリーを続ける力はどこから湧いて来るのだろうか。

「あの時のような経験は二度としたくないけれど、僕のようにギャラリーを運営しながらイラストレーターとして活動する人にとって、これ以上面白い場所はないんだ。2003年から日本に住んでいるけれど、いまだに東京は不思議な街に思えるよ」

ロブの最新作「Friday Bear(金曜日のくま)」は、彼が日本に来たばかりの頃、金曜日の夜に目にした、渋谷のディスクユニオンでスーツ姿のたくさんのサラリーマンたちがレコードを探している光景がインスピレーションになっているという。


ケンエレファントが運営するソフビ・スタジオ「中空工房」による純国産ソフビ「Friday Bear」

ロブが2012年からギャラリーを運営してきたことでできたコミュニティには、まだ世間に知られていない才能に溢れた若いアーティストも、長年アートを収集してきた通なコレクターもいる。

「アートギャラリーは、いわば社交場の役割もある。中には毎回決まった人だけが集まって、ほとんど作品に注目をしないまま会話が弾む展示会もある。それが、うちのギャラリーでは絶対にないのは誇りかな。アート通なお客さんも、アート初心者のお客さんにとっても、WISH LESSはいつでも気軽に入れる場になっていると思うんだ」

ロブがここで作り上げてきた空気感を求め、そして、イラストレーターとして長年アートの世界に身を置き、周囲の仲間やお客さんと信頼関係を築いてきた彼に会うために、多くのアートファンがここまで足を運ぶのだろう。

写真=山田大輔 文=守屋美佳

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