米ビーガンバーガー店の黒人女性創業者、地域奉仕に支援の輪

ピンキー・コール(Photo by Paras Griffin/Getty Images for ESSENCE)

米ジョージア州アトランタにあるビーガンハンバーガー店「スラティー・ビーガン(Slutty Vegan)」では先週、気温30度超の暑さの中、2000人以上の人が無料のハンバーガーセット(さらにマスクの無料配布もあった)を求めて長蛇の列をつくった。2018年創業の同店が提供する植物由来のハンバーガーは、肉が大好きな人たちさえも満足させてきた。

今回の無償の食事提供は、店のファンであるララ・アンソニー、ガブリエル・ユニオン、クリス・ポール、ルダクリスというセレブたちが、計1万5000ドル(約160万円)以上を投じて店を1日貸し切って行われた。同店には最近、反警察だとの理由から一つ星をつけるレビューが殺到し、閉店を求める声も上がった。

発端となったのは、黒人女性創業者であるピンキー・コールの発表だった。コールは自身の母校で歴史的黒人大学(HBU)のクラーク・アトランタ大と提携し、警察により射殺された黒人男性レイシャード・ブルックスの子どもたちが同大に通えるよう、60万ドル(約6500万円)相当の奨学金を付与すると表明した。

コールがフォーブスに語ったところによると、レビューサイトには店のファンたちが良いレビューを2万件以上残し、ネガティブなレビューを圧倒したという。「今回得られた大きな教訓は、店が人々のために多くのことをすれば、人は店を守ってくれるということ。これこそが愛と団結であり、こうした行為がもっと増える必要がある」

コールはこれまでも社会奉仕に関わってきた。子どもの頃、ジャマイカ人の母は自宅に近所の人を招き入れ、無料で食事を与えていた。コールはクラーク・アトランタ大学在学時に「セルフレス(Selfless)」と呼ばれるプログラムを率い、学校での社会奉仕活動推進を支援した。

2018年にスラティー・ビーガンを創業後間もなく、慈善活動団体「ピンキー・コール財団」を設立。同財団は最近、インポッシブル・フーズやラッパーのジャーメイン・デュプリと提携し、ポップアップの移動式屋台を使って投票率が低い地域の人々に投票を促す全国規模の活動「ボートニック(Votenik)」を立ち上げた。

8月に開始予定の最新プロジェクトでは、黒人が所有する生命保険企業アトランタ・ライフ(Atlanta Life)と協力し、「世代格差を埋める」ためにアトランタ中の黒人男性住民への生命保険提供を支援する。

スラティー・ビーガンはこの夏、アトランタ市内でさらに2店舗をオープンする予定。新店舗の場所は、キング牧師が少年時代を過ごした場所として知られる歴史地区オールド・フォース・ウォードだ。

コールが2018年7月に寝室2つのアパートで思いついたアイデアは間もなく、全米で慈善活動を行うフランチャイズ事業となろうとしているが、本人はこの急展開に気持ちが追いついていないのだという。

しかし多くの意味で、コールは驚いていない。人や地域に還元することは、常に自分の体に刻まれていた。コールはこれを、進化を続ける概念としてスラティー・ビーガンのアイデンティティーの中に残そうとしている。

「もちろん、おいしい食べ物を出している」とコール。「でも、これは食べ物以上のもの。本当に大事なのは、私たちのプラットフォームを使って善い行いをすること。私たちはそのために努力し、口先だけではなく資金を投じている」

編集=遠藤宗生

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