実験社会心理学の学術誌「Journal of Experimental Social Psychology」に先ごろ掲載された論文によれば、子供たちを含め圧倒的に多くの人が、「優秀」「天才」といった言葉を男性が持つ特質を表わすものと見なしている。
ハーバード大学とニューヨーク大学、デンバー大学のチームが行ったこの研究は、米国の児童(9~10歳)と成人、78カ国・地域の3000人以上を対象に行った5回の調査結果をまとめたもの。
論文の筆頭著者であるデンバー大学のダニエル・ストレージ准教授は、こうした固定観念が、女性たちを一流のキャリアを築くことから遠ざけているとの見方を示している。
たとえば、過去のある研究によれば、この無意識の偏見は女性たちに、求人への応募や仕事を紹介してもらうことを思いとどまらせている。また別の研究によると、求人広告に「才気ある人」との条件を記載すると、女性の応募が少なくなる傾向があるという。
STEM(科学・技術・工学・数学)分野で働く女性や、この分野で権力ある地位に就く女性が少ないことはすでに知られているが、別の研究によれば、そのことにも同様に、性別に基づく偏見(成功するのは優秀な人でなくてはならないという考え方)が影響を及ぼしているとみられる。
ヘルスケアの分野をみても、この偏見がどれほど有害であるかがわかるという。医学研究は歴史的に男性の生理学にとって有益であるように歪められており、それが女性の健康に多大な影響を及ぼしているというのだ。
マサチューセッツ州ボストンにあるブリガム・アンド・ウィメンズ病院は2014年に発表した報告書で、次のように述べている。
「病気の予防、診断、治療を含め、医学に情報を与えている科学が、性とジェンダーの違いという重大な影響を考慮せずにいる」「その事実が、研究者らが重要な意味を持った違いを特定する能力を身に付けることの妨げになっている」
米国ではいまだに、医師の66%以上を男性が占めている。このアンバランスは、特に女性のヘルスケアにとって問題だ。