虹色の子どもたちが未来を変える 「完結しない個性」が示す可能性

Ariel Skelley/Getty Images


井本さんや茂木さんが述べたように、いまの学校教育の多くは受験をクリアすることを目標に置いているように見える。学校教育で1つの物差しに並べられることに慣れてしまった私たちは、社会に出たとき多様な価値観のなかで生きることに戸惑う。

学校教育の物差しで通常の枠に収まらなかった人たちは輝きを失い、その物差しのなかでうまく生きてきた子どもたちさえ、そこで再び途方に暮れることも多い。

「自分とは違うことが得意な人や、多様な価値観の人に出会い、新しい世界を知って刺激を受ける。それが、生きる意欲や学びに向かう刺激になると思います。刺激はポジティブなこともネガティブなこともありますが、茂木さんが先ほどおっしゃっていたチームワークで何かに取り組むときにも、仲間との違いによって自分を知ることができますよね。

自分1人で完璧を目指すのではなく、自分はある意味不完全でいろいろな色やデコボコがあることを、素敵なこと、そして強みだと思えるといいですね。その上で、違う色や違うでこぼこを持ったキラキラ輝く人たちに出会い、その個性を認め合うことがチームワークにつながっていくのでしょう」(星山)

私たちが生きる世界に模範解答はない。効率の良い解法も公式もない。次々と生じる新しい局面において、それぞれが違いを生かして自分の力を発揮し、チームを組んで解決策を試行錯誤していかなければならない。失敗も含めて試行錯誤を楽しむことができれば、これから先、どんな困難な局面も乗り越えていけるのかもしれない。

本来なら、未来をつくる子どもたちの教育は、社会の現状よりも一歩先に進んでいるべきだが、果たして今の教育現場はそのような学びの場になっているだろうか。

茂木さんはこれからの教育に求めることを次のように提言した。

「それぞれの個性を伸ばし、お互いの個性を補い合って、チームで頑張ることを日本の教育現場でもっと波及させようではありませんか」

私たち大人や教員は、その言葉をどう受け取り、どのように行動するのか。多様な価値観を認め合い、子どもたちの力を最大限に生かせるような学びの場を作るために、私たち一人一人には何ができるのか。

茂木さんによれば、「人間の能力はオープンエンド」である。大人になった私たちも、それぞれの力を生かし、チームで試行錯誤しながら、世界を変えることができるはずだ。

連載:ドキュメント 教育革命の最前線から
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文=太田美由紀

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