虹色の子どもたちが未来を変える 「完結しない個性」が示す可能性

Ariel Skelley/Getty Images


一次元の物差しが教育を不幸にしている


3人目の登壇者である茂木健一郎さんは、次のように切り出した。

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脳科学者の茂木健一郎さんは日本の一次元な教育に問題意識を持つ

「僕がまず問題提起としてみなさんに訴えたいのは、学習障害とギフテッド(先天的に高度な知的能力を持つ)の子どもたちの教育や学びは似ているのではないかということです。星山さんが言われたように子どもたちは虹色で、いろいろな子どもたちがいます。そこに優劣はありません」

そしてさらにこう続けた。

「脳科学の見地から見ると、日本の教育ほど遅れているものはない。人間を一次元の物差しの上に並べる考え方が、教育をとても不幸なものにしています」

人間の能力はそもそも無限の可能性を持っている。個性は長所と短所からなり、ビル・ゲイツも、スティーブ・ジョブズも、1人ではいまのような成功にはたどり着かなかったはずだ。自分の力を発揮するためには彼らを支える違う個性が必要だったと茂木さんは語る。

「自分の力を発揮するためにはチームワークが必要です。どの個性も、自分だけでは完結しない。これは大人も子どもも同じだと思います。そしてさらに、人間の能力はオープンエンド。学校の成績なんて関係なく、学びには終わりがないのです」

違う個性が集まれば、可能性はオープンエンド


後半のシンポジウムでは、日本の学校における「評価」の弊害についても意見が交わされた。

「いまの学校の多くは、できないことに焦点を当てて学ばせようとします。我慢できる子は学校でうまくやれますが、そうでなければ進学校に行っても潰れる子はたくさんいます。

子どもたちのキラキラを奪うのは評価なんですよね。受験があるとこの評価を捨てられず、子どもたちは輝かなくなる。できないことだけに焦点を当てられると、勉強する気がなくなっちゃう。これはどんな子どもたちも同じです」(井本)

「子どものころって、サッカーが上手い子、絵が得意な子、おもしろい子、いろんな子がいて、これは俺が得意だけどあれはあいつがすごいというように、関係性が不安定だった。あのざわざわした不安な感じが本来の実態に近いですよね。でも、有名大学に入った時点で、偏差値が上とか下とか出てきて一列に並んだように言われるでしょう。あれはおかしな捉え方だと思います」(茂木)
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文=太田美由紀

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