虹色の子どもたちが未来を変える 「完結しない個性」が示す可能性

Ariel Skelley/Getty Images


試行錯誤という学びの本質


2人目の登壇者は、数学教師の井本陽久さんだ。自身も卒業した鎌倉の栄光学園で型破りな数学教師として活躍し、今年1月には、NHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』への出演も話題になった。進学校だけでなく、児童養護施設の学習支援や、不登校の子どもたちも分け隔てなく参加し、楽しめる学びの場を主宰している。

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数学教師の井本陽久さんは自発的な学びを重視する

子どものころから「変わっている」と言われ続け、「ダメ」と言われることをわざとやっていたと自ら語る井本さんは、「みんな同じがいい」という考え方が学校を息苦しくしていると言う。

井本さんは、教える栄光学園の生徒たちがレポートを漫画で描いてきたこと、雪が降ると窓を全開にしてはしゃぐ様子、一見何の役にも立たないいたずらや悪ふざけなどを、愛ある視点で撮影したスライドを次々に披露した。

「ダメダメだなあと思うことをするとき、子どもたちはとても生き生きして魅力的です。それは休み時間も授業中も共通して言えることなんですよ」

井本さんが授業で最も大事にしているのは、子どもたちが「できているか」「理解しているか」ではなく「自分で考えているか」だという。

「試行錯誤のために大事なことはたった2つです。1つ目は、安心して失敗できること。失敗するからこそ『どうして失敗したのかな?』と自分で考えたくなります。

2つ目は、自分のやり方でやること。自分のやり方で失敗するからこそ、『えっ! どうして違うの?』とさらに没頭することができるのです。

教えてもらったやり方で失敗しても、試行錯誤は始まりません。自分のやり方で安心して失敗できる環境さえ整えれば、子どもは目を輝かせ、自発的に学びはじめます」

そして、その自発的な学びを阻むのが「受験」というシステムだという。

「受験を意識した勉強では、どうしても『できるようになる』ことが目標になります。そうすると、子どもたちは自分の考え方で考えることをやめてしまう。なぜなら、試行錯誤は失敗を前提にしたものなので、それでは損をしてしまうからです」
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文=太田美由紀

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