今回の買収は、グーグルがスマートグラス分野で新たなチャレンジを行うことを示唆している。同社は2013年にGoogle Glassを発表し、Explorerモデルを1500ドルで売り出したが、奇妙な外見がジョークのネタにされることも多かった。
Google Glassは失敗に終わった製品という印象が強いが、2019年にグーグルはそのエンタープライズ版をリリースし、ボーイングなどの企業が製造現場で活用している。
業務利用向けのスマートグラスは外見を気にする必要がなく、コンシューマ向けの市場よりも大きなチャンスがあると考えられている。
2019年に発売されたNorthの「Focals」と呼ばれるARグラスは、一見すると普通のメガネだが、大きなアームの内部にコンピュータを内蔵し、片側にレーザープロジェクターを搭載している。また透明なディスプレイに通知やナビゲーションを表示可能で、アレクサのAIアシスタントに対応するが、これは今後、グーグルアシスタントに置き換えられることになりそうだ。
発売がキャンセルされたFocals 2.0は、第1世代よりもサイズを小型化し、ディスプレイの解像度を大幅に高めたものになる予定だった。グーグルはFocals 2.0で実現されたテクノロジーに魅力を感じ、Northを買収したものと見られるが、同社のスマートグラスの技術はそもそもインテルが開発したものだった。
Northはインテルが2018年に開発を中止したスマートグラスVaunの関連特許を買い取って、Focalsを発売したのだった。Focalsの初代モデルは2018年10月に発売され、価格は999ドルだった。
グーグルのハードウェア担当バイスプレジデントの、リック・オステルローは「Northの技術は当社のアンビエントコンピューティングの取り組みに役立つ」と述べた。
彼は昨年10月のハードウェア発表イベントMade by Googleで、アンビエントコンピューティングの取り組みについて説明し、個々の端末を意識せず、環境全体をコンピュータのように操作するプラットフォームとして紹介していた。
今回のグーグルの動きは同社が必ずしも近い将来に、コンシューマ向けのスマートグラスを発売することを示すものではないと考えられる。しかし、グーグルがこのエリアで何らかのデバイスをリリースしようとしていることは確実だ。
Northのチームは今後、グーグルがオンタリオ州キッチナーに構えるオフィスで開発を続行するという。