もう1つ話題になっていたのが、「4WS」という4輪ステアリング機構だ。低速で小回りがより良く利くように、35km/h以下の速度域では、後輪が前輪と反対の方向に向き、35km/h以上だと、前輪と同じ方向に曲がる。
MX-6が誇っていたのは、それらのハードウェアだけではない。標準装備もユーザーを圧倒した。電動ミラー、電動ウィンドー、自動ドアロック、電動サンルーフ、エアコン、クルーズ・コントロールなどがついていて、同価格帯の欧米車よりもはるかに優れていた。
赤ワインのように、時が経つに連れて味が出る
僕は、1992年にMX-6に乗って評価をしている。もちろん良い車だと思ったけど、当時、日産シルビアなどの優れたライバルもあったし、マツダのラインアップにはロードスターとRX-7があったので、MX-6はそれほど目立たなかったのも覚えている。
しかし、数年前に94年式のMX-6を所有しているオーストラリア人の友人に話を聞くと、彼はこんな風に話してくれた。
「まず、あのシャープなボディデザインは美しくて老けないね。それに前輪駆動でも、軽い車重に対してV6エンジンはちょうどいいパワーを提供してくれている。シャシー剛性とサスペンションの設定がしっかりしているし、4WSがついているので、コーナーに急接近しても、安定して進入すると同時に、アンダーステアが出ないし、4WSのおかげでお尻がキュッと回り込んでくれる。しかも、標準装備がすごい。このクルマが20年以上前にデザインされたなんて。今も数千ドルで程度の良いヤツが手に入るよ」
このような評価は米「ジャロップニック」というウェブ媒体にも出ているし、イギリスの同僚からも同じようなコメントを聞いた。MX-6は、美味しい赤ワインのように、時間が経つに連れて味が出てくるというか、格好良く歳を重ねているようだ。
今振り返ってみると、ルックス、走り、信頼性、標準装備に満足した海外のユーザーは前輪駆動だったことを飲み込んだけれど、MX-6がもし後輪駆動だったら、ドリフト好きにも受けて、もっと売れたかもしれないね。
国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
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