無観客シーズン継続を 「新体感」観戦ソリューションで乗り切れ

サッカープレミアリーグでも応援中のファンの姿が会場のスクリーンに映し出されている (Getty Images)


この技術、実は熱心な野球ファンなら目にしたことがあるはず。と言うのも2017年、ソフトバンク対DeNAの日本シリーズ第2戦7回裏2死満塁から中村晃がタイムリー、二塁走者今宮健太が激走、ホーム上でクロスプレーとなり、球審の判定はアウト。これがリプレー検証の結果、今宮の手が早いと判定が覆り、ホークスが逆転に成功した。このシーンでリプレー検証に使われ、テレビでオンエアされたのが、4DReplayだ。

球審側からに視点ではキャッチャーミットに今宮のタッチが阻まれたかに見えるが、視点を動かしキャッチャー側からでは今宮のタッチがわずかに早いのがわかる。いわゆる「今宮の神の手」プレーだ。



また、こうした自由視点の利点を活かし、NBAのプレーオフなどでも採用され、2019年には韓国球界やMLBでもその映像が配信されるようになった。ホークスがこのソリューションを導入したことにより、PayPayドームではこうした新体感映像を毎試合、目にすることができるのだ。

ソフトバンクは通信会社の強みを活かし5Gを活用。こうした映像を同社のサービスで配信する。開幕3連戦では、VR/ARなどのサービスを無料配信。内野席からグラウンドにせり出した「コカ・コーラ・シート」から、より選手に近い映像を収め、無観客試合を補完する工夫を凝らした。さらに6万円もの顔写真応援ボード掲出権、3000円のファン制作応援ボード掲出権などをセールス、あの手この手でプロ野球を盛り上げている。

IT関連会社だけではない。阪神タイガースもネット決済を活用しや選手への「投げ銭」システムを導入。未曽有の逆境でも、スポーツ界の底力を見る思いだ。

新型コロナに対する警戒感や危機感は、日本に限った状況ではないらしい。先日、ベルリンのモバイル・マーケティング・コンサルタントとオンライン・ミーティング、新型コロナ対策に成功したとされるドイツにおいても、第二波に備えまだまだ楽観できないらしく、スポーツ観戦においても「まだ気を許せる状況ではない」と現地のドイツ人は語った。

NBAではスマートリングを選手と関係者に装着し、またPGAではスマートバンドを活用し、それぞれの体調をモニターするというニュースも届いた。アメリカでは、まだ観客動員の話題にもなっていない。

観客を入れての試合が予定されている日本だが、残念ながらスポーツのLIVE観戦はしばらく見送り、その合間にこうした新しい技術の実証実験を重ね、新体感を創出して行くほうが、スポーツの未来のためだと考えるのだが……。

「夜の街」ならぬ「夜のスポーツ」自粛の発令がなされないことを祈りつつ。

連載:5G×メディア×スポーツの未来

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文=松永裕司

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