「指先がメスになる」時代 SNS誹謗中傷対策をどう進めて行くべきか

ネット上の誹謗中傷は、罪に問うこともハードルが高いのが現状だ(Shutterstock)

インターネット上の誹謗中傷を規制する動きが加速している。ネット上での人権侵害は以前から問題視されてきただけに、早急な対策が求められる。

しかし、匿名での投稿が多いために法的措置へのハードルが高いとされるなど、課題は多い。ネット上の安全を守るために、政府やSNSなどを運営するプラットフォーマーにはどんな対策や配慮が求められるだろうか。

ツイッターやヤフーも違反規定を明確に


LINE、フェイスブック、ツイッターなどSNSの国内法人でつくる「ソーシャルメディア利用環境整備機構」は、女子プロレスラーの木村花さんの死を受け、5月末に緊急声明を発表した。誹謗中傷への主な対策として、禁止事項の明記やそれらに違反した際にアカウント停止などの処置を行うこと、健全なソーシャルメディアの利用を啓発していくことなどが示された。

ツイッターを利用している人なら、アカウントの「凍結」という言葉を目にしたことがあるだろう。ツイッタージャパンは、独自に「Twitterルール」をつくり、暴力、攻撃的な嫌がらせ、ヘイト行為など15項目の禁止事項に対する立場とそれぞれへの対応措置を定めている。

例えば「暴力の賛美」の項目には、暴力的な犯罪に関して「こんな事件が起きてうれしい」「もっとたくさんの人にこんな事件を起こしてほしい」という具体的な投稿内容の例を挙げながら、規制の対象となることを警告している。このような投稿が発見された場合、違反回数などを考慮した上で、初めての場合は投稿の削除の要請、繰り返す場合はアカウントの永久凍結をすると規定している。

twitterルール

このような禁止事項に違反している投稿は、投稿に関係のない第三者も通報できる仕組みがある。これは、フェイスブックやインスタグラム、ユーチューブなどでも導入されている機能だ。多くの人の監視の目があることで、心ない投稿が減る効果が期待される。

ポータルサイトYahoo! JAPANを運営するヤフーも、誹謗中傷対策に向けて動き出した。これまでも不適切な投稿を事前に防ぐため、専門チームによりパトロールや人工知能を用いた投稿の発見も行ってきたが、投稿者の自由を守るためにも違反規定を明確にする必要があると考えている。「プラットフォームサービスの運営の在り方検討会」という有識者会議(座長・山本龍彦教授)を設置し、月1回の会議をへて年内には自主ルールを発表する予定だ。

ヤフーの検討会委員で毎日新聞グループホールディングス顧問の小川 一氏は「まずプラットフォームが明確に責任あることを認識するのが大事。実態として全て目を通すのが難しいのは分かるが、ヤフーコメントも含めて議論していきたい」と語る。
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文=田中舞子、督あかり

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