そのヒントを探るべく、京都大学iPS細胞研究所所長である山中伸弥教授を訪問。7月4日 19時半〜放送される「NHKスペシャル」で、タモリさんと「人体 VS ウイルス」について語る山中教授に、番組に先駆け、新型コロナウイルスと社会の変化、人体との関係について聞きました。
──まず、ウイルスについて伺います。短期的にみるとウイルスは人類にとって相当厄介な存在ですが、ウイルスは人類の敵なのでしょうか。
私は、ウイルスが必ずしも敵とは思っていません。ウイルスは基本的に病気の原因と考えられていますが、実は人体は、過去に感染したウイルスを取り込んで遺伝子の設計図に役立てているという例が複数あります。また、バイオテクノロジーとしてウイルスを遺伝子治療等に利用している例もあります。最近では常在ウイルス(人体に常に存在しているウイルス)の存在についても明らかになるなど、敵とは言えないことが徐々にわかってきています。
──人類の進化に大きく関わっているわけですね。すると、いまは脅威である新型コロナウイルスも、将来的には我々に取り込まれてポジティブに働くことがあるということでしょうか。
新型コロナウイルスそのものが私たちの遺伝子に取り込まれるかに関しては、そんなに可能性が高いとは言えないでしょう。ただ、日本を含め世界中で感染対策を迫られたことで、このウイルスは、生物学的にというより、社会的に大きな影響を与えたと思います。
例えばオンラインの授業や会議、取材など、コロナがなかったらこの先何年もかかったであろうことが急激に実現しているわけです。しかも、多くの人が、やってみたらそれほど悪くないという印象を持っている。ある意味、社会の進化の起爆剤になっていると思います。
このコロナ禍は、良い意味でも悪い意味でも、多くの人にとって今までの生活様式を見直すきっかけになっています。良い方に働くかそうでないかはケースバイケースかもしれません。ただ、当たり前を見つめ直す機会になっていることは間違いありません。