ビジネス

2020.07.07

医療AIは普及するか? アリババとエムスリーのコロナ解析AIが日本で承認


5月のGW明けから下旬までに11施設から約800例のデータが集まりました。PCR検査を実施した前後6日間で撮影されたCT画像が対象です。集まったデータで性能評価をしながら本当にいけるのかと緊張して見ていました。1施設を見た時に期待値通りのデータで、いけると思いましたね。

これまでにPMDAの承認を受けた画像診断支援AIと比べても、高い水準の精度です。日本のコロナの画像データをかなり読み込んでいる大学病院の医師と同程度だと言える結果でした。それからデータを整えて承認申請を6月初旬にしました。

通常は、PMDAとの初回面談から承認申請までに1年〜1年半、申請後半年ほどかかりますが、今回は承認申請まで1カ月半、申請後4週間でやりました。常識的なスケジュールではありません。医療現場の医師の方々にもギリギリのお願いをしてなんとか間に合わせてもらいました。

──PCR検査は3月から大幅に増え、簡易で迅速なPCR検査の開発も進んでいます。CT画像を使ったAI診断支援の需要は続くのでしょうか。

PCR検査では、感染していても発症日は陰性になるなど採取のタイミングや場所によって結果にバラツキがあります。また、PCR検査の回答は都内では翌日に届いても、地方だと2日後など地域によっては時間がまだまだかかります。

この検査結果を待つまでの時間というのが、クラスター対策や院内対策にとってネックになっています。待っている間に院内の不安がどんどん広がり、患者を受け入れるのか、受け入れるためのリソースはあるのか、などの懸念から新型コロナかどうか分からなくても怖いから受け入れるのをやめようという動きにつながっていました。

このAIはそれを救う可能性があると考えています。PCRの結果が来る前に他の臨床情報と組み合わせてトリアージに使える。100%ではないけれど、まあ大丈夫だろうと思えるのか、この人はちょっと危ないかなと思えるのかは重要です。有事の対応として1人の医師だけで対応するのではなく、サポートするという意味で重要なツールになると思います。

──無償で7月から40〜50施設で利用が始まる見通しとのことですが、ビジネスとして成り立つために有償でどれ程の医療機関が導入すると考えていますか。

数百程度の医療機関に導入してもらいたいと思っています。AIラボの戦略としてはまず、医療現場で医療AIが普通に使われていくような価値観や環境を作った上で、我々のサービスも使われるようになってほしいと考えています。
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文=成相通子 写真=帆足宗洋

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