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2020.07.07

医療AIは普及するか? アリババとエムスリーのコロナ解析AIが日本で承認


最初の1週間で登録医療機関は10ほどで、想定をかなり下回りました。インターネットに画像をアップロードすることへのハードルが高く、セキュリティ規定が厳しい医療機関が多かったからです。それでも4月7日の緊急事態宣言があり、開始1カ月後には200医療機関まで増えました。

読影依頼から結果のフィードバックまでは、ほぼ30分以内で終えており、リピート率は高かったです。特に最初に第一波が広がった北海道の医療機関で多く使われています。「1人で当直していて不安だった、相談相手がいない中、依頼したらすぐに返答が届いてありがたかった」といったコメントをもらいました。地方の中小病院は、読影体制が脆弱です。そういった病院に多く使ってもらえたのは良かったです。

──AI展開の準備も同時に進めていたということですね。

アリババの中国のAIは20秒で診断、精度は90%以上としていますが、日本の症例は診ていません。聖マリの医師と共に日本の画像データで、どの程度の精度が出るのかを試していました。4月中旬までに入手したPCR検査が陽性だった6つの画像を解析してみましたが、全て0.5以上(陽性の疑いが高い)で返していました。もちろん、PCR陰性を誤って陽性で拾っている例もありましたが、陽性はその段階できちんと拾えていることが分かりました。

社内がわきました。その中の1例は、人間の医師が見分けるのはかなり難しかったのですが、AIは0.63で陽性と評価していました。それ以外のPCR陽性はほぼ1や0.9という数値で迷いがなく、ぱきっと決めている。これはすごいAIだと思いましたね。

──医療機器の安全性と有効性を評価するPMDA(医薬品医療機器総合機構)に相談して、医療機器製造販売の承認を得るまで1カ月以内という短さでした。

PMDAには4月15日に面談しました。その前に厚労省に相談し、このAIの意義などを話しました。厚労省は新型コロナの医薬品や医療機器を優先して審査するよう通知を出していましたが、我々のシステムも迅速に承認プロセスが受けられるように最初から相談していました。通常はこのプロダクトの意義の位置づけや臨床性能評価、会社の評価といったプロセスをひとつずつやるのですが、同時進行で進めることになりました。

日本のコロナ患者を受け入れている病院に協力をしてもらい、コロナの疑いがありPCR検査をした患者のCT画像データを集めて性能評価をする臨床研究を始めました。研究には、「臨床現場は大変なことになっている。PCR検査の結果が戻ってくるのに時間がかかり、判断ができなくて困っている」と聖マリや全国の11の大病院が賛同してくれました。
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文=成相通子 写真=帆足宗洋

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