アリババグループとエムスリーが開発した、人工知能(AI)を使った新型コロナウイルス肺炎の診断支援システムが6月29日、厚生労働省から医療機器の製造販売承認を得た。
6月3日に承認されたインファービジョン(2015年に創業した中国のAIスタートアップ企業)に続き、国内2例目となる新型コロナに関するAI肺炎画像解析システムだ。6月2日の申請から異例の早さで承認された。
開発に加わったエムスリーは、日本の医師の9割以上が利用しているといわれる医療プラットフォーマーで、2017年から医療AIの研究開発や承認申請の手助けなどをしてきた。プロジェクトを率いたエムスリーAIラボ所長の杉原賢一にその狙いと承認までの軌跡、今後の展望を聞いた。
──承認された「COVID-19肺炎画像解析プログラム Ali-M3」の概要について教えてください。
Ali-M3は、中国で集められた3067例の新型コロナ肺炎の検査画像データを学習データとして、アリババグループが開発したAIをベースにしています。新型コロナウイルス肺炎では、コンピューター断層撮影装置(CT)の画像に「特徴的な」すりガラスのような淡い影が出ます。
このシステムでは、医療機関で撮影したCT画像からその影を見つけ、AIが新型コロナ感染による肺炎の可能性を瞬時に判断します。CT画像上にどの部分に注目して診断したのかを色をつけて表示した上で、新型コロナによる肺炎がどの程度強く疑われるかの確信度も0.000(可能性が低い)から1.000(高い)までの数値を出します。
精度は大学病院で多くの新型コロナ患者を診てきた専門医と同等レベル。医療機関が胸部のCT画像をエムスリーのシステムに送ると、数分以内に判定して返答します。
日本は人口当たりのCT設置台数がダントツに多い国で、PCR検査がキャパシティの問題や検査結果が出るまでに時間がかかるなどの制約があるなか、このシステムを使えば瞬時にある程度の結果が得られます。PCR検査が待てない急患の患者への対応やまだ新型コロナ患者を診た医師が少ない地方の病院などで、力を発揮できると考えています。