なぜ娘は殺人犯に? 「警察は市民の味方」と信じた両親の告白|#供述弱者を知る

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輝男さん「娘が取り調べで呼び出されるたびに、愛知川署に送り迎えしていた。車の中で取り調べのことを聞いても、娘は答えようとしなかった。『大丈夫か』『大丈夫や』というやりとりだけ。こちらは、警察にだまされるなんて夢にも思ってませんから。事件のことを聴かれていることは知っていたが、うちの子が疑われているなんて思いもしなんだ」

西山さんが「自白」調書をとられたのは、2004年7月2日。その4日後の6日に逮捕された。刑事たちは、その間にも西山さんと連絡を取り続けていた。両親に話さないよう口止めし、意のままに操っていたとみられる。

輝男さん「娘が取調官のことを『私の理解者だ』『好きだ』と言っていたので、びっくりした。『何を言うとるんや、お前は』と、しかりつけた。『あんまり自分から刑事に近づくな』と厳しく言ったが、刑事に相手をしてもらえるのがうれしいのか、私の注意が耳に入らないようやった」

以下に、時系列に沿って西山さんの逮捕前後の様子を示す両親の言葉を紹介したい。

水面下で進められていた「逮捕」までの流れ


7月4日:逮捕2日前


令子さん「その日、美香と2人で、コロッケのコンサートを見に大津のびわ湖ホールに行ったのですが、美香はあまり楽しそうにしていなかった。その帰りに刑事から電話があったみたいで『お母さんと、いい思い出になったか?』と聞かれたらしいです。その時の『いい思い出』という言葉が引っかかったのを覚えています」

7月5日:逮捕前日


輝男さん「違和感が募りに募って、娘が何かされるんじゃないかと思い、刑事に電話した。『おまえも人間やったら赤い血が流れているやろ』と、その刑事に言ったのを覚えている。刑事から、人工呼吸器の話とか、アラームの話とかされていたので、おかしいな、とうすうす思ってはいた。娘が話さないので『美香に口止めしているのか』と刑事に言ったと思います。刑事は『S(同僚看護師)には熱いお灸(きゅう)を据えてやる。美香さんには事情を聞いてるだけだ』と言っていた。逮捕されるまで、あの連中は、はっきり言いよらんかったです」

7月6日:逮捕当日


輝男さん「午後5時ごろに、娘を取り調べていた刑事から電話が掛かってきて『会わへんか?』と言われた。逮捕時間は午後6時で、私たちは夜8時ごろに逮捕のことを言われた。びっくりして、頭が真っ白になったというか、視界が真っ白になった。愛知川署で娘に会えると聞かされていたけど、結局会わせてもらえなかった」

令子さん「逮捕と聞かされて、本当に心臓が止まるかと思った。頭がくらっとした。刑事に『大丈夫ですか』と言われて、正気に戻って、報道はしないで、やめてください、と言ったのを覚えています」
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文=秦融

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